忘れられない２ (ページ39)

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グアムから帰って来て携帯の電源を入れたら、留守電がいっぱいになってる。
なにこれ。

お母さんと妹がスーツケースを受け取りに向かう。
メールもいっぱい。

「……A行くよ」
「おねーちゃん早く」

ものすごく、気分転換になったけど、グアムで英語全くしゃべんなかった。
日本語だけで４日間すごした。

ショップに入っても
「こんにちは、ニーハオ、アンニョンハセヨ」
とか言ってくる。
「こんにちは」
「どれにします？とりますよ、このサイフどうですか、人気」
「あの……」
「これどうですか、かなりやすい。ほら、今だったら、11万円とちょっと。日本じゃもっとする、ぜったいお得」
「はあ」
「これに決める？きめたらいいよ、ここに戻したら、すぐ売れるから」
「いりません」
「あ、そうですか、いらないの。いらっしゃいませ、このサイフ人気です」

見習うべきか？あそこまでやったらあのショップ押し売りって嫌われそう。
携帯の着信は、雅紀くん、雅紀くん、雅紀くん、雅紀くん、雅紀くん。
ちょっとこれ凄くない？

あのキスがよっぽど驚いたんだろうな、早まった。
まだあと少し出勤しなきゃならないのに。

メールを見たら、
『連絡ください』『話したいことが』『連絡まってます』
ってしんみりしたメールのあとに。

『こらー！どういうことか説明しなさい！栄転って何！
日本に帰ってきたらどうなるかわかってんの？
絶対に捕まえて聞き出すから覚悟しなさいよ！
この前はびっくりして逃げられたけど、次は逃げ切れないから！
俺、本気で走ったら９秒台いくんだからね！』

全然ちがうテンションのメールが入ってる。
何メートルを９秒台なのか書かないと速さがわかんないよ？
ああ、明後日から、仕事行きたくない。

家に帰って、荷物を解いて、和食を食べて、
次の日、休日をのんびり過ごしてたら、店長からメール。
『帰ってきてたら連絡して。
相葉さんには内緒にしてやってもいいから』

ちょっと、なに。この５日ほどで何があったんだろう。
相葉さんには内緒とか、雅紀くん、何か言った？
絶対冷やかさないであろう、店長に先に探りを入れなきゃ。

電話をかけたらすぐに電話にでる。
「お疲れ様です。花邑です」
「おつかれ。お前の栄転先決まったぞ」
「どこですか？」
「ここ」
「……へ？」
「絶対阻止してやるっていっただろーが！」
「え、やだ！店長は？」
「俺は、本社。このチャンス、俺が逃すと思ったか、バーカ」