忘れられない２ (ページ37)

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72[side MASAKI] ページ37

『相葉さんが仰るとおり、
デートしてみないとわからないことってあるんですね。
相葉さんのいい彼女にはなれそうもありません
勝手ですみません』

夕方ごろ、ゆーちゃんからメールが届いて、ほっと、一息つく。
ふってくれて、ありがとう。助かるよ。
バックヤードの、他店に引き取ってもらうための什器をさっさと小さい引越しやさんみたいなとこに頼んで持って行ってもらう。
すっげ重いやつ、３こ。
片付いて、売り場に戻って、Aちゃんを無意識に、探す。

Aちゃんは今日は休みみたいだ。
潤くんに、声を掛ける。
「お疲れ」
「お疲れ。いらっしゃいませ。なんか買っていけ」
「潤くんこそウチでなんか買ってよ」
「……あの変なボクサーパンツ買う？」
「どれ？骸骨？3990円のお買い上げでございまーす。じゃあ俺靴下かおっかな」
「２足買えよ。3990円のお買い上げありがとうございます」
「……社販で買うから交換しよっか……」
「それならいらない。なんか用？今日休みでしょ」
「Aちゃんの住所教えて」
潤くんがじろって顔を見てくる。

「個人情報保護法で社内のコンプライアンス的にも俺個人的にも教えられません」
「……けちー」
「本人に聞け」
「着信拒否されてんの！むり！」
「そんな奴にますます教えられない」
「親友がこんなに困ってんのに……」
「……誰が親友」
「俺たち親友でしょ！照れないの！」

ちょっと笑っていったら、キッツイ目線でグサっと刺す。
「可愛い部下のAを泣かす奴は親友じゃない」
「……多分泣いてるから、涙止めたくて連絡先知りたいんだって……」

潤くんがはあ、ってため息を吐く。
「……どちらにしても、今連絡取れないから無理だって」
「どうして？」
「今日早朝からグアム行ってる。５日くらい帰ってこない」
「……うっそ！」
「……じゃ、また明日な。いらっしゃい！昨日来たんだろ？取り置きサンキュ」
昨日来たのにおらんかったやん、バレンタインやぞ？余裕やな！って声。

潤くんが接客に行っちゃって、すごすごと、引き下がる。

グアムとか。
国外逃亡なんて酷いよ、Aちゃん。
パスポート、なんかの時の為にずっと持ってるけど、急には無理だって。

大野さんの店に入ると、カウンターの向こうで、うたた寝してる。
「コーヒーください！」
「っつ！んあ？」

大野さんが、ふにゃって笑って、いらっしゃいって言った。