忘れられない２ (ページ35)

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70[side MASAKI] ページ35

翌日。
二日酔いみたいな気分。
こんなテンションでデートできんの、俺。
断ろうかと散々悩んで、待ち合わせ場所に行く。

「相葉さん」
こっち向いて手をふる、ゆーちゃん。
「おはよ」
「今日はキレイ目じゃないんですねー」
「水族館なのにー？いこっか」
ダメだ。テンションが全然上がんない。

……話題がない。どうしよ。
仕方なく、ニノの話をしたら、あのボロボロの人って言った。
「でも前にさ、ビシーッってスーツ着こなしてA！とか来たときカッコよかったでしょ」
Aちゃんの名前出しちゃった。ちょっと後悔。
「いつですか？」
「いつだっけ？翔ちゃんがありえないくらいボロボロの服着てさ」
「……」
「Aちゃんが腕掴んできゃー隠れて！って必死で。ニノも調子のって翔ちゃん！って大声で。５人でラーメン食いに行った……」
「……あのお洒落な人二宮さん？櫻井さんもどうして汚い……」

この子、さっきから見た目の話しか、しない。
もやっとした気持ちのまま、水族館に着く。
「海獣コーナーからだよね、こっちカワウソ」
「ほんとだ、かわいー」
あ、ちょっと嬉しそう。でも。
「こっちはゴマアザラシの水槽だよ！」
「かわいいですねー」

あれ？なんか、違和感。なんだろうこれ。
「こっち見て、ほらカピバラ！」
「かわいい！」
「思ったより大きいよね？」
「カピバラの大きさについて想像したことないというか……」
「……ラッコ見ようか」
「うん。……やーんかわいいー」
「……かわいいね」

かわいい、しか言ってないよ？それ本気で言ってる？
女の子って適当にかわいいっていうじゃん。
「ペンギンー。かわいい！」
「そだねー。あいつ誰かに似てない？」
イワトビペンギンを指差す。

「ええ？ペンギンにー？」
くすくす笑ってる。そこは笑うとこじゃないんだよ？
「動かないね。何見てんのかな」
「壁？飼育員さんとかじゃないんですか？寝てるのもいる、かわいー」

この子じゃない。
この子じゃないよ、Aちゃん。
シミュレーションなんか、意味無かったんだ。
だって、Aちゃんは、Aちゃんなんだから。

デートしたとき、すっげ楽しそうで、すっごく嬉しそうなのに、
急にがくーって落ち込んでた。
ここにいるのが、大好きなあのひとならよかったのに。って好きな人と俺を比べて落ち込んでるんだろうななんて思い込んでたけど。

逆だったんだ。
相手が私でごめんねって言ってた。