忘れられない２ (ページ32)

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67[side MASAKI] ページ32

電話かけて今までのこと謝って、ゆーちゃんのこと報告してこれからも宜しくねって、
どんな形でもいいから側にいてって。
言う。絶対言う。

「Aちゃん？今どこ？」
「大野さんのとこ……」
「今から、ちょっと出てこれない？」
「ここに来ないの？」
「……じゃ、店の外でいいから」
「ゆーちゃんと一緒？」
……あれ？なんで知ってんだろ。

「取り合えず、今日は先約があるって帰って貰ったんだけど、……今日無理なら明後日でもいいけど」
「じゃあ、ちょっとだけ……」

Aちゃんが大野さんのお店から出てきてひきつった笑いを浮かべる。

「どうしたの？」
「あのね、告白されちゃったの！」
「……よかったね」
にこっと笑う、Aちゃん。
喜んでくれるんだ。
でも、それがどうしてこんなに胸を締め付けるんだろう。

「Aちゃん、喜んでくれるの？」
「勿論だよ！よかった！」
「もう二度と恋愛相談しないでって、言ったよね」
「言った」
「意気地無しって言われた」
「言った」
Aちゃんがちょっと笑う。泣きそうな顔で。

「一生片想いしてればいいって……だいきらいって言ったよね……ごめんね、おれ、嫌われてるとか、気づけなくてさ……」

好きにならなくていいから嫌いにならないでよ、ともだちでいいから側にいて。

「嫌いっていってごめんね。大好きだよ」
「……ほんと？」
「うん。大好きだったよ」
「だった……？」
「うん」
なんで過去形？

「なんか色々迷惑とか、かけてごめんね？迷惑かけてたことに気づかなくてごめんね」
「ううん。よかったね、おめでと」

よし、言うぞ。
言う。
ずっと特別な意味で好きだった、
でも、もう諦める。
今まで、ありがとう、これからも前みたいに友だちでいてほしいって。

「あのさ、俺」
「ごめん、私今日早く帰らなきゃいけなくて」
「あ……うん」
あ……逃げられた。
意気地無しの俺が一気に押し寄せる。

「ね、雅紀くん？」
「ん？」
「私に迷惑かけてたお詫びに、一発殴らせてくれる？」
「うっそ！」
イタズラっぽい可愛い笑顔に胸がぎゅーって締め付けられる。

「目、つむって」
「ええー？なんかこわー！」

ちっちゃいペラペラの手で殴られたって痛くも痒くもな……

俺のコートを握った？と思ったら柔らかさと温かさが俺の唇に触れた。

「え？！今の」
びっくりして目を開けたら、もう、Aちゃんは走り出していて。

雪だけが風に舞い上がって、
目の前に広がった。