忘れられない２ (ページ29)

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64[side MASAKI] ページ29

諦めるという、前向きなのか後ろ向きなのかよくわかんない決意をして。

一生懸命仕事に打ち込む俺。
最初はどうなの？って思ってたスーツで出勤も、
外しテクばっか上級者になって行って、
潤くんに、先端行ってるって言われて、翔ちゃんにそれってアリなの？って言われて、
ニノにわけわかんないって言われて、マスターに、そのスパッツ必要？って聞かれる。

時々、ジャケットにジャケットをライドオンでライドオンみたいになって、
あれ？寝ぼけて間違えたって焦っても、おっしゃれーって言われてＯＫみたいな。

世間では、バレンタインで盛り上がってて、
でも俺のテンションはかなり盛り下がってて、
どうでもいいやってほんと投げやりになってて、

去年の、バレンタインをちょっと思い出す。

Aちゃんが、俺が仕事終わるの待ってて、
「ちょっといい？」って言って、
「これ」って恥ずかしそうにチョコくれて、
もしかして本命？って浮かれてたら、後ろから来たニノも翔ちゃんも、
「あー、なんだみんな一緒かよ！俺だけ本命かと思ったのに！」
って言って、なんだあって笑って。

家に帰って中を覗いたら、手紙が入ってた。
『雅紀くんだいすき A』って書いてて、
みんなにもこんなんやってんの？勘違いしちゃうよって、苦笑い。

一応、みんなに手紙入ってた？って聞いたら、うんって言った。
「かわいいこと書いてたよね、ながーい文章」
翔ちゃんが笑って言った。

ながい文章。へ？って思ったけど、見せてっていうのも変だし。
「すきって書いてたよね？」
探りを入れる俺。
「ああ、書いてた！」
「書いてた！お茶目にも程がある！」
ってニノがケッてわらって翔ちゃんがぎゃははって笑って。
やべ、勘違いするとこだった！って笑って。

今年もくれるのかなあ。義理だけど？

パートのおばちゃんに『相葉さん、彼女いますか』なんていきなり聞かれて、
『いませんが何？』って聞いたらいいんですって去っていったり、
なんか周りがざわざわしてる。

Aちゃんは相変わらず、遠くを見てる。
最近特に、遠くを見てる。
もうすぐ、一年だ。

出会って２年、初デートのあの日から、１年。
１年前の俺は、あんな楽しい日々が毎日続くと信じてて、

好きな奴なんか諦めて、俺の彼女になってよって、

言うチャンス何回もあったのに言えずじまいで、

今はもう、俺の声は、届かない。