忘れられない２ (ページ26)

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61[side MASAKI] ページ26

Aちゃんが、深いため息を吐く。

「欲求不満たまることは仕方ないでしょ？飽きもせず１年半も片想いしてるんだもんね」
「……きっつー」

でもその時Aちゃんは急に、泣き顔になって、こう言った。
「私、が、相手に、なってあげても良かったのに。他の子を、そんな……」
「……何いってんの？Aちゃん、好きな人……」
Aちゃんの口から、そんなこと。

「雅紀くんだって、好きな人いるでしょ？別に、いいよ、私。体だけの、お友だちとか……」
「何言ってんの？」
何言ってんの。
何言ってんだよ。

大事なAちゃんを、そんな風に扱えるわけないでしょ。何言ってんの。

「私だって、寂しくて、死にそうなことあるもん。知らない誰かに、寄りかかりたくなることも、ある」
「知らない誰かに連れて行かれるんなら、俺に言って？なんでそんな知らないやつに……」
寂しくて、知らない男に抱かれようとするAちゃんを一瞬想像して、ぐうって吐き気が込み上げた。
ため息で、逃す。
俺でよかったらいくらでも、って思って、
Aちゃんも、私でよかったらいくらでも利用すればいいって思ってるんだって、気付いた。
それは優しさかな？
違うよね。

「今、寂しくて死にそうって言ったら、抱いてくれる？」
「……」
「例えば今雅紀くんが寂しくて欲求不満で、私が目の前にいたら、どうする？」

温もりを分け合うことは、簡単。
男と女なんだから、話は早い。結局、やることはひとつ。
それが愛情でも寂しさでも、スポーツの延長線上でも、なんでも。

簡単なんだ。簡単だからこそ。
取り扱いに、注意しなければ、簡単に、壊れて粉々になる。

Aちゃんが、俺の腕の中で、粉々に壊れてしまうことを考えたら。
頭が、真っ白に、なった。

大切なんだよ、大好きだよ、Aちゃん。
だから、君は、一番大好きな人に、幸せに包まれて、抱かれるべきなんだよ？

「Aちゃんは、大切な、友だちだよ……」

それしか、いえなかった。もっと言うべきことはあったのに。
頭は、真っ白になった。

もう、うんざり。一生片想いしてればいいんだ、意気地なし！って言われて、

そして、

「雅紀くんなんて、だいきらい！」

って言われた。

痛みで、気が遠くなる。

ああ、俺、Aちゃんがすきなんだ。
嫌われて初めて気付くなんて、俺って本当に、バカだ。

……バカだ。

Aちゃんを見送って、込み上げてきた涙を、苦笑いでごまかした。