忘れられない２ (ページ24)

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59[side MASAKI] ページ24

消えちゃう。
つかまえなきゃ。
思わず抱き寄せて、行っちゃダメって言ったけど。

ね、もしかしたら、いつかいなくなっちゃうのかなあ。
彼氏とかできたら、もうデートなんてできないよね。
彼氏なんかできなきゃいいのに。

そんな悪いことまで考えて、ダメだって、慌てて伝える。

「Aちゃんの想いが、ちゃんと好きな人に届きますように」

俺は、バカだったんだ。
何にも知らずに、何にも気付こうとせずに、何にも考えようとせずに。
ちょっと考えればわかること、いっぱいあったのに。

Aちゃんが、おそるおそる握った俺の手も、
『あの子じゃなくて、ごめんね』って言葉も、
観覧車にのって天辺でキスしようって冗談で言ったら、困った顔で一瞬悩んだ横顔も。
そして、そのあと見せた、絶望的な表情も。

たくさんの笑顔の下に、何が隠されてたかなんて。気付きもせずに。

ゆーちゃんが好きって言ってたよって教えてくれたコーディネートを、
Aちゃんが、似合うよ、私もこういう格好大好きだって言ってたからって。

Aちゃんは全身バッチリ決めるより、外して着るのが好きだって言ってた。
ツイードのジャケットと八分のパンツで革靴とか、
全身ブラックの細身スーツに明るい色のストールとか、そういうのが好きって言ったから。

ね、俺全然気付かなかったんだ。

今度はパンダ見に行かない？って言っても、
高いとこ怖がるとこまた見たいからって、スカイツリー行こうよって誘っても、
美味しいラーメン屋さんをみつけて誘っても、
新しい人気のショップ見つけてリサーチしに行こうよって誘っても。

誘う人間違えてるよって、笑って。
どうしたんだろう、デートして、あんな楽しかったのに、
どうして？って考えて、考えて、
ああ、俺とのデート、つまんなかったんだって答えにたどり着くまで、
時間がかかったり、した。

気付いたらもうすぐ夏。

他店の同期の奴に合コンに誘われて、
すっごい肉食女子に、ガンガンに押されて抱きつかれて、ひーってなってるとき、
ばったり、翔ちゃんに会った。
『たすけて！』目配せで言ったのに、
『ファイト！』って顔で親指立てて、キラーンって笑って去っていった。

翔ちゃん、ファイトじゃないよー！
『もう歩けないー。帰りたくないー。自分の家わかんないー。』
じゃないよー！

だれか助けてー！