忘れられない２ (ページ23)

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58[side MASAKI] ページ23

自分の感情に何か大きな違和感を感じたけど、原因はわからないまま、デートの朝。

待ち合わせの駅についてAちゃんを探す。
電話かけよっかなと思ったら、声が聞こえた。

なんか可愛い感じの子がいるって思ったら、Aちゃんだった。
私服もこもこじゃん。ふわふわなのに、もこもこ。
超ふわもこじゃん！

全体的に、いつもはクールでシャープって感じなのに！
ああ、今日のブーツ、ペタンコなんだ。
いつもよりちっちゃいよ？

思わず、手を繋ぐ。
これ、俺の。かわいいでしょ。みたいな気持ち？
俺のじゃないけどね？

電車の中でも手をつないだままで、Aちゃん時々つないだ手を見てる。
なんでつないでんのかな？って顔してるのがちょっと可笑しいの。
初デートのあるある、その１。
手をつなげない。つないだら離せない。だって離したらまた繋げない。

水族館の中でフロア案内が見れなくて困ってる顔を見て、お互い空いてる方の手で、頭くっつけて開いて見たら、Aちゃんが小さい声で、え？って言う。
あるあるその１バレてるー？

でも、ま、いっか！って顔が可愛いから、離してあげない。
一緒にいても、考えることが変わってて可笑しくて、
動物園とかにいって、フラミンゴとかナマケモノとか一緒に見たら
なんていうのかなって、もっと一緒にいたいなって思っちゃったら。

どうして、Aちゃんの好きな人は俺じゃないんだろうってそればっかり考えた。
イルカショーの後、イルカちゃんにかけられた水をAちゃんが拭いてくれて、
思わず、呟く。

「俺Aちゃんのこと好きになるからAちゃん俺のこと好きになってよ」
えっ？って見上げた顔は、とっても困ったみたいな悲しい顔で、慌てて付け加えた。
「ってさ、簡単に、気持ち変えられたらいいのにねー？それができたら苦労しないよね？」

Aちゃんに、また悲しい顔、させちゃった。
好きな人の話になると、いつも目が涙でいっぱいになる。

水槽を見ている横顔は、マンボウをみているのに、
あんなゆっっっっくり泳ぐユーモラスなマンボウをみてるのに、悲しい顔で。

水槽の中に入りたい。そっちの世界に行きたい……って、言った。

ね、そっちの世界って、水の中で生きる生物になりたいってこと？
俺、やだよ。水の中にいっちゃったら、もう会えない。
いつもニコニコの横顔が、青色の世界に染められて、
Aちゃんが、すうーって消えて、いなくなりそうに、見えた。