忘れられない２ (ページ21)

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56[side MASAKI] ページ21

俺のミラクル全部集めて、
Aちゃんにあげてもいいよ。
だから。
Aちゃんが幸せになりますように。

みんなを幸せにしてくれるAちゃんが、
一番不幸なんて、残酷すぎるよ。
Aちゃんの恋がかなって、
Aちゃんが一番幸せになりますように。

そして、それが叶ったとき、一番近くで、一番喜んであげたいよ。
よかったね、って。

手をつないで大野さんのお店まで走った道は。
指先から、あったかさが伝わって、
この想いまで届けばいいなって、思った。
Aちゃんが、一番幸せになれますようにって。

Aちゃんが、俺が好きなのはゆーちゃんだって速攻気付いて
お互い頑張ろうねって感じのことを言ったら、目にいっぱい、涙をうかべた。

Aちゃんをこんなに苦しめるんなら、そんな恋やめちゃえばいいのに。
なんてね。そううまくいかないよね。
ゆーちゃんが他の人見て、その人はAちゃんを見てて、
……Aちゃんは、誰を見てるの？

ふっと目が合って、笑いあったら、Aちゃんはふにゃーって笑った。

ある日、俺は什器と什器の間に落ちたものを拾えなくて困ってるゆーちゃんを助けてあげて、
Aちゃんと翔ちゃんが付き合ってるのか聞かれた。
仲いいから知ってるかなって思ったって。

二人ともフリーだから、今度お昼一緒にどう？って普通に誘ってみればいいんだって話してたら、丁度そこに翔ちゃんが現れる。
誘っちゃえ！なんて茶化してたら、
翔ちゃんが、A、行こ、ってまるで彼氏みたいに言った。
「あららー」
「……ほら、あれで付き合ってないなんてちょっと考えられない……」
「たしかにねー」

Aちゃんは、そのまま嬉しそうについて行く。
「あ！俺が先約なのに！」
「お昼どこで食べてるんですか？」
「んとね、共通の友だちのとこで」
「常連さん以外は入れない？」
「まあ、そんな感じ」
背中を見送ってたら、Aちゃんが、翔ちゃんのスーツの裾をぴって、掴んだ。
「……あ」

俺の胸のはしっこの方を、ぴって掴まれた気がした。ちょっと、痛い。
そこにウチのスタッフが走ってくる。

「店長！クレームです！電話！」
「えええ？なになにー！」
「一回着ただけで破けたぞ、どうしてくれる！金返せ、けど商品は返さないって」
「まじー！」
走って戻りながら、気持ちを切り替える。
恋や愛だの言ってる場合じゃねー！