忘れられない２ (ページ20)

今日:36 hit、昨日:37 hit、合計:737,350 hit

55[side MASAKI] ページ20

あははって笑ってコーヒーカップを置いたら、マスターが、ふふって笑う。

「違うよ、二人見てたら、疲れててもやなことあっても、気付いたらつられて笑ってる」
「Aちゃんってそんな感じだよね、わかるー」
「相葉ちゃんもね」
「そっかなー」
「ふたりが話してるとこみたら、なんか別世界。背中に羽生えてそう。ふたり」
「羽？虫みたいなの？とんぼみたいな？」
「天使のやつ」
「死んじゃってるってことお？天使の輪？お化けみたいに？」
「ふふふ」

でもね、天使って大げさだけど、でもまあ、そんな感じ？
ふわふわしてる。

よくも悪くも、現実離れしてるっていうか。
シャボン玉とか、雪の結晶とか。
触ると、はじけて消えたり、溶けてなくなっちゃうみたいな。
俺、なんかロマンチストっぽくないー？

ゆーちゃんは、すっごい人間って感じ。
可愛いことに全力投球。頑張りすぎ。
翔ちゃんの気を引こうってして、翔ちゃんがあからさまに軽蔑した顔で見て、
ああ、かわいそうって胸が痛む。
潤くんと仲良くなろうって頑張ってるのに、
潤くんの営業スマイルの壁を壊すこともできないまま。
Aちゃんとどこが違うんだろうって悩んでる姿を見て、教えてあげたくなる。

Aちゃんはね、
なんの欲も見せないんだよ？
無欲の勝利っての？あれだよ。
頑張ってるのは、自分のためじゃないんだよね。

だから君はAちゃんにはなれないんだよ。
おれが、潤くんとか、翔ちゃんになれないのと同じように。

切ないよね、頑張っても頑張っても、自分のものにならないってのはさ。
頑張るのを止めたとき、手に入るかもしれないけど、
そんなの、そのときになってみないとわかんない。

運命の女神は、気まぐれだ。ニノみたい。

Aちゃんが片想いしてる相手に本命チョコあげたのに、
義理だって思われたとか聞いて、
ほらやっぱり、運命の女神はきまぐれだって、思う。

どうして届かないものばっかり欲しくなるんだろうね。
届くものはいつでも届くから欲しくなくなるのかな。
例えば、今、手に届くところにAちゃんはいるけど、
決して心までは届かない。

練習だって言って、Aちゃんが、
『あのチョコね、本命だったんだよ』って俺に言った。

俺に言っても、届かないよ。
俺が今、どんなに切なくて胸が張り裂けそうで、抱きしめたいって思ったとしても。