忘れられない２ (ページ16)

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ロイヤルミルクティを飲み干して、ねこと遊んでたら、携帯に、着信。

「……雅紀くん……」
「出なくていいよ」
大野さんが雑誌を見ながら言う。

「でも……もしもし？」
大野さんが、あーあって、言う。

「Aちゃん？今どこ？」
「大野さんのとこ……」
「今から、ちょっと出てこれない？」
「ここに来ないの？」
「……じゃ、店の外でいいから」
「ゆーちゃんと一緒？」
「取り合えず、今日は先約があるって帰って貰ったんだけど、……今日無理なら明後日でもいいけど」

明日は。明日から私、暫く休むのに。
「じゃあ、ちょっとだけ……」

外に出たら、もう店の前にいる。
困ったみたいな、顔。

「どうしたの？」
「あのね、告白されちゃったの！」

やっぱり、そうだよね。うん。
「……よかったね」
「Aちゃん、喜んでくれるの？」

「勿論だよ！よかった！」
頑張れ、頑張れ、わたし。

「もう二度と恋愛相談しないでって、言ったよね」
「言った」
「意気地無しって言われた」
「言った」
「一生片想いしてればいいって」
「……」
「……だいきらいって言ったよね……ごめんね、おれ、嫌われてるとか、気づけなくてさ……」

ちがうよ、雅紀くん。ちがうよ。

「嫌いっていってごめんね。大好きだよ」
「……ほんと？」
「うん。大好きだったよ」
「だった……？」

「うん」
胸が、つまる。
「なんか色々迷惑とか、かけてごめんね？迷惑かけてたことに気づかなくてごめんね」
「ううん。よかったね、おめでと」

「あのさ、俺」
「ごめん、私今日早く帰らなきゃいけなくて」
「あ……うん」
雅紀くんが、困ったように立ち尽くす。

「ね、雅紀くん？」
「ん？」
「私に迷惑かけてたお詫びに、一発殴らせてくれる？」
「うっそ！」
あははって、顔を見合わせて笑う。
ちゃんと笑えてる。
偉いぞわたし！

「目、つむって」
「ええー？なんかこわー！」

素直に目をつむる、雅紀くん。
好きだったよ、ほんとに大好きだったよ。

最後に。一度だけ。

背伸びして、ぎりぎり。

観覧車でできなかったから。
最初で、最後のキスを。

唇に、少し触れて、ダッシュで、逃げる。

はぁはぁ。
息を整えながら、
隣の駅まで線路沿いを歩く。
うううって、泣き声を上げて歩いて、
空を見上げたら、たくさんの雪が降ってきた。

明日になったら忘れるから。

忘れられないけど、忘れるから。

涙を拭わないまま、一人雪の中を歩く。