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高いとこ、怖いんだけど。
でも観覧車って、デートって感じする！
ドキドキしながら、乗ったら、床の一部が、ガラスになってるー！
「あ、これ翔ちゃん無理なやつー」
「え？」
「観覧車なんて全く観覧できん！って話してるだけなのに顔こわばってたー」
「……」
「扉しめます」
係員さんが扉を閉める。
ああ、もう逃げられない。
15分間、逃げられない。
「……あれ」
「……ん？」
「あれあれあれー？」
「なに？」
「怖かったりするの？」
「……」
「隣おいでよ」
「……むり」
「あのさ、その手すりみたいなの必死で握ってもさ、落ちるときは落ちるよね？」
「怖いこと言わないでよお」
「やっぱ怖いんだー」
きゃははーって笑われる。もうやだ。
いけるかなーって思ったのに。
「よいしょ」
「やだ！動かないで！揺れる！」
「隣に移動しただけでしょ」
「ちょっと揺れてるよ？怖いよ」
「手すり必死に掴みすぎ。ほらほら離して？こっち見て？」
「ひー」
「…………言うこと聞かないならまた向かいの席に戻ろうかな」
「もう動かないで！揺れるから！」
あひゃひゃって笑ってる。酷いよ。
涙目で見上げたら、反り返って笑う。揺れる。
「そんな怖いんなら、乗る前に言いなよ！」
「だってえ」
じっと見ては、笑われる。
「私見ないで、どうぞ一望を観覧してください！海とか見てください！」
「Aちゃんを観覧しまーす」
「私は、手すりを観覧する」
「700円払って、手すりを観覧するのー？」
「雅紀くんこそ、700円払って私を観覧してどうするの！」
「じゃあ、一番天辺で、キスとかできないじゃん！」
「……誰と？」
「もしもAちゃんに彼氏ができたら！」
「もうコレを生涯最後にするから、もう一生天辺でキスしない」
「最後？なら最後の記念にキスしちゃう？」
……えっと。ええええっと。
「だめ……」
「あれ？一瞬考えた？Aちゃんってばー！」
酷い冗談。目線を、一瞬外に向けたら、遠くが、見えた。
遠く、遠く。
「ん？平気になった？」
「今、高いところより怖いものがあるって気付いたよ」
「何？」
あなたが私の前から永遠にいなくなること。
「天辺でキスしてるとこ、店長とかに見られること？」
そう言ったら、雅紀くんがふんわり、って笑った。
キスなんかしたら、もう傍にいられなくなる。
想像したら、まっさかさまに、落ちる気がした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年2月21日 12時
