忘れられない２ (ページ1)

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結構いっぱいお買い物しちゃった。
大野さんに魚の形の鍋つかみと、魚の形の箸置き６個。
他の人たちには、クランチチョコみたいなの、適当に買った。

「マスターに特別感すごくない？」
「だって一番優しいもん。大野さん大好き。ごはんおいしいし」
「……ふーん」

外に出たら、すっごく寒い！
「さむ！」
「海みるぞー」
「凍える！」
「へーき！ここまで来たんだから！」
港を並んで歩く。
つなぎそうで、つながない手。
時々、手の甲と肩が、とん、とぶつかる。

勇気をだしても、いいかな。
ちょっとだけ。今だけ。
そおっと、手をつなごうとしたら、雅紀くんが左手を上げる。
ふわっと風で目に入りそうな前髪をすっとよける。

ああ、口から心臓出るかと思った。
再び、チャレンジ。
手をつなごうとしたのに、小指と薬指だけを掴んで、あわわってなる。
「ん？」
「手、冷たいかなとか思って、私寒くて指がちぎれそうだから」
一生懸命、いいわけ。

「雅紀くんの手はどうなのかなとか思って思わず、あの」
「ん」
しっかり繋ぎなおしてくれて、そのまま雅紀くんのダウンにすっぽり入る。
「あ。恋人みたいなやつ！あったかい！」
「俺でがまんしてねー」
顔を見上げたら、にーって、笑う。

「Aちゃん、鼻真っ赤。ほっぺも耳も。目も涙目だし。そんな寒い？」
「雅紀くんといると、あったかいよ」

心の声が、そのまま出ちゃって、ハッとする。けど、気にしてないみたい。
「俺もね、あったかい。すっげ寒いのに、あったかい。なんなんだろうね」
雅紀くんの腕に頭をとん、と傾けたら、かじかんだ指先を、雅紀くんが、きゅっと握ってくれた。

「……あの子じゃなくて、ごめんね」
「……俺こそごめんね、……うりゃー」
繋いで無いほうの手で、耳をぴって引っ張る。
「ん？」
「耳こそ千切れそうだよね？俺の千切れてない？」
「かろうじてくっついてる！」
お日さまみたいな笑顔。

「……やっぱり寒いから、戻る？もう、帰る？」
「もうちょっと、一緒にいて」
「そんな可愛いこと言ったら帰したくなくなるじゃーん」
「私、行きたいショップあるの。最近雑誌とかで取り上げられてて急成長してる。雅紀くんも他人事じゃないと思うんだけど。リサーチしたい」
「わー！仕事の顔になったー！」
「仕事終わりのＯＬとか狙って行きたい」
「完全に仕事の顔だー！それまで時間あるから、観覧車のらない？」

雅紀くんが、近くの観覧車を、指差した。