９.理由 ページ9
「それもそうか。私、昨日から飲まず食わずで一睡もしてなくて、どうも冷静じゃないようですね」
「そうだAは今冷静じゃない！」
松本さんが言って、皆がうんうん頷く。
「どうやら今日は死ぬこともできそうにないので、お給料早く貰えるように働きますか？」
「そうして！」
櫻井さんが大きな声で言う。
「で、もう一度聞きますけど、あの条件って、一体なんなんですか？」
「ああ。前の家政婦さんがね、口が固いおばあさんだったんだけど」
「はい」
「つい、ぽろっとね、友だちとか家族に俺らのこと言っちゃって。ちょっと面倒なことになったんだよね」
「面倒なこと？」
「うん。あることないこと、根も葉もない噂をね、家政婦さんじゃなくて、その家族が想像を交えて話したことが噂になって、リークされて、雑誌社が事務所に裏取りに来た」
「……」
「うんざりして、それならいっそ、話し相手が最初からいない人がいいだろうってことであの文言を……」
櫻井さんの言葉で、やっと納得する。
友だちとか家族や、知り合いのこと聞いたのは、そのせいか。なるほど。
「お金と住む処に困っている、ご飯がうまい、って言うことはなんとなくわかります。けど！明日地球が滅亡しても驚かないってのは……」
「じゃ、今度はって、天涯孤独みたいなこと書いて募集したんだけど、次に来たおばさんが契約者が俺らってわかってギャーギャー騒いで！」
松本さんがうっとおしそうに言う。
「ああ、嵐さんが契約って知っても平気な人を募集したのね。なるほど。じゃ、学歴高卒以上ってのは？」
「翔くんがね、頭の悪い女が嫌いなの」
大野さんがにこっと笑う。
「Aちゃんは賢そう」
「学歴と頭の良し悪しは比例しません！」
私の言葉に櫻井さんが私をじっと見て呟く。
「もうすぐ死ぬの、勿体ないな……やっぱりその命っていうかAちゃんごと、ちょうだ…」
「最後の若いとかなんか色々書いてたのは、好みの問題ですか？」
櫻井さんが、スルーされた！ってがっくりしてるのを横目で見て皆に聞く。
「そのあと来たのが90近いおばあちゃんとか、ホームをレスしてる人とか、屈強なオッサンとかで！どうせなら可愛い子と同居したいと思ってさ！」
二宮さんがニヤニヤしながら言う。
「理由はよくわかりました。残念です」
「ざんねん？」
相葉さんが顔を覗き込む。
「すっごくまともな理由だったので」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
