８.人の不幸は蜜の味 ページ8
二宮さんが本当に困ったみたいにため息を吐く。
「……相葉くんなら、きっと、Aさんの身の上を聞いても心から同情できる、はず。俺らは、だ、め、だ……くっ！」
櫻井さんが、泣いてるみたいに笑ってる。
「人の不幸は蜜の味？」
私がボソッと呟くと。
「こんなに甘いとはね」
と二宮さんが言って、相葉さんを除く全員が爆笑した。
「無事死ぬことができたら、彼を呪い殺してから、皆さんの枕元に立ちますからね？」
相葉さんが、悲しい顔で言う。
「そんなこと言っちゃだめだよ。生きてればいいことあるよ、笑ってよ、ね？」
「いいことってなんですか」
「例えばね、うーんと、生きてたから、俺たち出会えたんだよ？俺、生きてるAちゃんに会えてよかったって思うよ、うん」
善人だ。この人は善人だ。
「で？どうして死にたいの？」
事情をまたはじめから説明する。
皆、もう遠慮なく、ニヤニヤわらってるのに。
相葉さんは真面目に聞いて、可哀想と言った。
あれ？なんだこれ？
笑われてる方が気が楽になるのは何故だ。
この人はきっといい人で、心から同情してくれてるからまだいいけど。
本当なら、残りの４人みたいに笑いたくて堪らないのに。
友人たちはみんな、相葉さんみたいに同情するふりをするんだろうきっと。
最初の同情が本物だったからまだいい。
これが、偽物の同情だったら？
「……」
「ま、相手を殺してやろうって思わないAちゃんは優しい子なんだよ、きっと」
相葉さんがふんわり笑って言う。
相手を、殺す……。
「あ、それ今は言っちゃダメ」
櫻井さんが慌てて言う。
「何人殺したら極刑になるんでしたっけ？」
「ほら気付いちゃったよ！」
櫻井さんが中腰になる。
「えっ？」
「……まず、一人目は」
「あああ、俺、最後にして？」
櫻井さんが大声で言う。
「え？なにー？」
「相葉さんからですか？」
「うん。よろしくね？俺、今日唐揚げの気分！」
「あのバカ唐揚げにされちゃうよ！」
二宮さんが大野さんの後ろに回り込む。
「落ち着け、とりあえず、落ち着け、リーダー、ほら、なんとかして！」
両手の手のひらを私に見せて松本さんが、じりじりと後ずさる。
「え？おいら？えっとえっと、そうだ１年！」
「１年？」
「処刑判決でるのは、多分、１年以上先になるよ！何年もかかるよ、うん、逆に、死ぬの、延びるよ。凍死の方が綺麗だし、いいよ、ね？」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
