５.帰宅 ページ5
「ああ、あれはね、あ！翔さん帰ってきたから、あの人に説明頼も」
二宮さんがおかえり！と玄関に向かって言う。
４人目が、帰って来たんだ。
「……玄関に女の人の靴が……うわ！なに！」
櫻井さんがリビングに入って私の顔を見るなり、ボトッとカバンを落とす。
「あーあー、翔くん、かばん」
松本さんが拾ってはいって渡してる。
「君、だれ！」
「えっと、Aと申します。名字はどうなってんのかわかりません」
「え？あ、はい」
目を真ん丸にしたまま、キョロキョロと周りを見渡して、私をまた見る。
「で？この方は……」
「さっき採用した家政婦さん」
大野さんがそう言って、えええ？と言ってる。
「……そんな人この世にいたの」
「……」
「いたんだ……いや、でも、この人はむしろ中の上ってより、上玉と言っていい……」
「あの、櫻井さん、」
私が呼び掛けたら、うわぁとか、いちいちびっくりしてる。
「あの、家政婦の条件は何なんですか？あれじゃあ、行方不明になってもすぐには気付かれない女をなぶりものにしようとしています、としか読めないんですけど」
「だろ？だよな？だから来るわけねーって言ったんだよ、おれは！」
「きたね」
大野さんがふわふわ笑って、周りもみんなふわふわ。
「いや、和んでる暇はない。採用になったということは条件を兼ね備えたということで？」
「ええ、まあ」
「はぁ。ああ、そう。で、嵐の中で誰が好きってことになったの？」
「みんな素敵なんじゃないですか、私は女の方が好き、なんだってさ！」
「えっ！まじ？まじで？」
二宮さんの言葉に櫻井さんが目をむく。
とりあえず、黙って二宮さんを睨む。
「まーじーかーぁー！一瞬頭の中にMISIAのエブリシン流れたのに！」
「残念だったね、翔さん」
松本さんがニヤニヤ笑って続ける。
「第一既婚者だよな？」
「……あの、なるべく早く死にたくなったので包丁かりてもいいですか？近くの河原教えてください」
「あ、待って待ってごめん！」
慌てる松本さん。
「どーゆーこと？」
櫻井さんが眉を寄せて口を尖らせる。
「あのね、Aちゃんは、お給料もらったら死ににいくの。雪山に遭難しにいくの」
大野さんが、お散歩にいくの、みたいな言い方でふわふわ笑って言う。
櫻井さんが、ふわふわ笑ってそれを聞いて、顎がガクッと落ちる。
「なんだそれ！は？死にたいのこの人？」
大きな目が更に大きくなった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
