34.いってらっしゃい ページ34
「は！しまった！俺こうしちゃいられねー！今から出るんだった」
「はーい。じゃあ翔ちゃんリタイヤー」
櫻井さんの言葉に相葉さんが笑う。
「はあ？お前も仕事だろーが！」
「あ、そうでしたー！銀行閉めまーす」
「続きどうすんの！」
二宮さんが大声で聞く。
「続きは……今度いつみんなそろう？」
相葉さんが慌てて銀行を片付けてる。
「明日の午前中じゃね？」
松本さんがみんなのスケジュールのホワイトボードを見て言う。
ここに書いてあるんだ。
「ならおいら釣りやめとこ」
大野さんが言う。
「じゃあ、明日居ない人はリタイヤね？」
二宮さんが言う。
「了解！」
皆が急にバタバタしだして、あっという間に相葉さんと櫻井さんが用意をして玄関に向かう。
櫻井さんが、パッと振り返って、私に言う。
「帰ってくるまでこの家から一歩もでるなよ？勝手にしなれたら困るから！」
相葉さんもかぶせるように言う。
「つまんない男のために落ち込んでたら可愛い顔が台無しだよ。美味しいもの買って帰ってきてあげるからね？待っててね？」
相葉さんの優しい言葉と笑顔に、ちょっとふんわりした気持ちになる。
「なに！美味いもの買ってくるってだけでその笑顔もらえるのか！」
櫻井さんは何かを決定的に勘違いしてる気がする。
「なんだっけ？そう！メロンパン！美味いヤツ買ってくる！雅紀には負けん！」
また勝負してる。
「メロンパンよろしく！」
リビングで二宮さんが、よく通る声で言う。
「行って来ます」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
私の言葉に二人が一瞬固まる。
「……うん」
「ありがと」
出て行く二人が、顔を見合わせて、小さい声で何か言ってる。
「婚約者許せねーな」
「うん。おれも絶対許さない」
扉が、パタンと閉まる。
もうちょっと、聞きたかったかもしれない。
初対面なのに、心配してくれて、怒ってくれる。
この世は、想像してるより、優しくできてるかもしれない。
リビングに戻ったら、二宮さんと大野さんがニタニタ笑って人生ゲームのボードを見てる。
「おい、触るなよ？おれのやつは！」
松本さんがウケケと笑いながら言う。
「くっそーＪが仕事だったらよかったのに……今トップだし……」
「次は誰？意外なとこで翔さんか」
「おいらこのままじゃ最下位だな」
松本さんと二宮さんと大野さんが、悪い顔してる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
