29.敗北感 ページ29
「あの男が敗北感でぎゃふんとなる方を選べってことなら」
私の言葉に全員が注目。10のキラキラの目がこっち見てる。
冷静になれば、この状況、かなりすごいことなんじゃ？
死にたいとばっかり想ってたから全然気付かなかったけど、
これってある意味、ファンの子なら即死の状況。
「なに！それは誰！」
二宮さんがイライラしたみたいに言う。
「前、嵐さんの番組を毎週見ていたあの男なら、誰でも打ちのめされます！」
「……いつ？」
大野さんが聞く。
「昨日の夜なにしてた？とか、あと、毎回なんか食べてました！」
全員が、あーあーあーとか言ってる。
「見てたんだ！しかも毎週！そんな人をやりこめるのは申し訳ないな！」
櫻井さんが言って、二宮さんがかぶせるように言う。
「じゃあ、わたし行きますからお仕事頑張っといて」
「いや、待て！彼氏役だろ！恋人役！じゃあここは恋人にしたい男の……」
「でもAちゃんは俺が一番好きっていってくれたしー」
「……おいらなら明日いけるぞ！」
「俺が！言い出したんだから！俺がいく！」
やいやいうるさい。
「私は誰でもいいです！誰でも一緒」
「はっ？一緒？」
二宮さんが目を見開く。
「一番好みのタイプっていうか、その土下座させたい婚約者は誰に似てたの？」
大野さんがふわふわ笑いながら聞く。
「……うーん。上手くいえないけど、王子様系でした」
「王子……」
誰かがぼそっと呟く。
「なんていえばいいんでしょう。私と結婚決まったとき、彼の周りの女の子が悲鳴をあげて」
「……」
「嫌がらせが続いたので、寿退社することになりました」
「……下手したら、この世で一番モテるタイプのヤツだな！」
櫻井さんがぼそっと呟く。
「みなさんおモテになるでしょ？」
「もてるならだーれがAなんかを取り合いすんだ！ファンですーなんて山ほど言われるけど、付き合ってくださいってなると話は別！」
二宮さん、Aなんて、って言った。なんて、って何よ。
軽く睨むと、何よって悪びれることも無く、見返す。
「おモテにならない……」
「相手が勝手に『彼女いらっしゃるでしょ』とか遠慮すんだよ！」
松本さんが吼える。
「……でもファンの子いっぱい……」
「ファンの子と知り合う機会もないの！我々は！」
櫻井さんが中腰で言って、ふうってため息を吐いて、またご飯をかきこむ。
翔さん、ちょっと食いすぎたらまた顔腫れるよ、って松本さんが言ってる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
