19.記名 ページ19
「お前の葬式にはそいつも呼んでやるから死ぬ寸前に言え」
「けち！」
「上等だ！」
喉を押しつぶすような小声で話してるから、喉が痛くなってきた。
何で初めて会った人とこんな仲良く話してんだろ、
今朝まで死ぬ気満々だったのに、
恋人にしたい男ランキングの上位の男とお買い物してる。
人生死ぬ気になったら何でもできるっていうけど。
でもこれはちょっと意味が違うか。
……とか、思いながら帰宅。
「おそい！二人で行かせるんじゃなかったと後悔しはじめていたところだ！」
櫻井さんが、玄関で仁王立ち。
「ただいま」
「おかえり！」
でも挨拶はちゃんとするのね。
しかも、私の手に持ってた荷物を受け取ってくれた。
ジェントルマン。
さすが恋人にしたい男ランキング、確かこの人は……
「下着とか着替えはちゃんと買ったの？」
二宮さんがリビングのソファで反り返って聞く。
「買ってきました」
大野さんが、さりげなーく、言う。
「じゃ、出して」
「……」
「早く、出して？」
「……なぜ……」
「名前かくから。Aって、おおきく」
油性マジックの太いほうのキャップを外して待機。
「……なぜ、大野さんが」
「だってリーダー字、きれーだしー」
相葉さんがにっこにこして言う。
「どうせ可愛いの買ってきちゃったんでしょ？」
「……でも……」
「大丈夫、おいら、目とかうなじとかの方が好きだから」
「……」
「体よりついてる顔のほうが大事でしょ。下着みてもなんも。だから早く」
見たこと無いくらい真剣な顔の大野さん。
あまりにも普通で、思わず袋から下着を出そうか迷う。
「A、早くだしなさいよ」
二宮さんが眉間にしわを寄せて言う。
「……A、来年まで死なないんだから、名前書かなくてもよくね？」
松本さんが助け舟。
「Ｊは黙ってて！」
二宮さんが、堪えきれずって感じで、にやっと笑う。
ふと見たら、櫻井さんが両手で口を押さえて笑うのを必死で堪えてる。
「……私やっぱり、下着このままでいいので、お世話になり……」
「あ！待って！」
相葉さんが慌てて止める。
「死なないんなら名前かかなくていいだろ！」
松本さんが、また言ってくれる。
「お前の好きな俳優の名前聞くの来年の今日にしてやる。その時生きてたら会わせてやってもいい。多分俺って言うだろうけど」
「……あの質問なんですが」
素朴な疑問を思い切って問いかける。
「はい？」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
