15.色気より ページ15
「俺の出番はーーーー！」
相葉さんが、大声を出す。
「あなたの場合ボロ出そうでしょうが！」
「なんだよニノー！俺もAちゃんのお母さんと話したかったー！」
「やめときなさいって。無理無理」
「そうよそうよ」
大野さんがまだ智子ちゃんのままで、櫻井さんがぐはあ！って笑ってる。
「しかしお前すげえな？この状況で笑わないって」
松本さんが私を見て言う。
「笑い方……ってどんなんでしたっけ」
「ああ、傷ついてんだな。俺が癒してやるから安心しろ」
さっきからカッコいいことばっかり言うけど本気かしら。
「とリあえず、なんか食ったらちょっとは元気も出るだろ、何食いたい？今日は俺が作ってやるよ」
松本さん、もしかしたらこの人もいい人かも。
見た目迫力というか威圧感ありすぎだけど。
「……なんでもいいの？」
「うん」
「すきやき……」
「よし！丁度、買い物ついでに着替えとか下着も見にいこーぜ。すきやき俺も丁度食いたかったから黒毛和牛を……。うわ」
「え！なに！うわ！」
「わ！」
皆が私の顔を見て驚く。なに？
松本さんが、もう一度、慎重に、聞く。
「ちょっと待って。……すきやき、食う？」
「うん」
しーん。なに？何事？
「……やっぱり、死ぬのはダメ！絶対だめ！だめだめ！」
櫻井さんが大声で言う。
「すきやき、好き？」
大野さんがびっくりした顔のまま聞く。
「だいすき」
ぐはあ、とか色々声が聞こえる。
「Aちゃん。他に、好きな食べ物……」
相葉さんが私をみて恐る恐る聞く。
「お刺身とか、スパゲッティとか、焼肉、あとね、私メロンパンが大好きで」
「……Aってもしかして」
二宮さんがぼそっと呟く。
「色気より、食い気……」
「イケメン見てもおなか一杯にならないんだから当たり前でしょ」
「……ラーメン」
櫻井さんが静かに呟く。
「ラーメン？」
「……全然笑わなかったAが初めて見せてくれた笑顔のキーワードが、ラーメン……俺ラーメンに負けたんだな……」
「笑顔？私笑ってました？」
「すっげ笑ってるよ！死んだら美味しいもの食べらんなくなるよ！いいの？」
二宮さんがよく通る声で言う。
「……」
「いいのっ？」
「……えっと」
「言っとくけどね、うちらと一緒にいたら、うまいもんだけは間違いなく食わしてやれっけど？」
「ほんと？」
思わず嬉しそうに言ってしまってから周りを見たら。
全員が、ぐったりしたように、脱力した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2013年11月10日 21時
