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二人で隣のおばさんに頭を下げてから、同時にため息を吐いた。
「錫来がもし無事でもこの近所には戻りたくねぇだろうな、噂好きなおばさんたちの餌食。針のむしろだな」
俺の呟きに山本も頷いた。
「言えてる、多分私達の話し声が聞こえて、帰ってきたのかしら、夜逃げじゃなかったのかしらって確認しに来た感じだったよね」
「うん。どんなホームセキュリティの会社より頼りになりそう。いち早く駆けつけてくれる」
「あはは、便利だね」
「番犬もいらねーよな」
一瞬笑い合って、はぁ、とため息が出た。
「帰ろっか」
「うん」
二人でのろのろと自転車を押して歩き出した。
「明日になれば何かわかるかな」
「だといいけど」
二人でそう言い合いながら家路に向かう途中、なんとなく振り返ったら錫来が家の前に佇んでいた。
いつもは無視するところだけど、山本の前なら許される気がして、じっと見た。
山本がパッと何かを感じるように目を上げる。
「松本くん見えるの？」
「……」
「私はぼんやりとした影しか見えない、みなちゃん？」
「……うん」
「……」
その横顔はもう何かを諦めたかのようで、酷く酷く辛そうに表情を歪ませた。
何もできない。
こんな力があっても意味がない。
他の誰かより早く何かに気づいていても、誰にもなんにも言えないし役にも立たない。
自分の無力感に打ちひしがれた瞬間だった。
亡くなった後の人を見れる力より、もうすぐ亡くなる人がわかる力とかのほうが良かった。
そしたら気をつけて、とか、伝えることができた？
いやそれでも。
悪魔の鎌がその喉元を狙っているのを見てそれを本人に伝えることができたとしても。
何だコイツ気持ち悪い、とか逆に面白がられて珍獣扱いか、下手すりゃ神の子として祀り上げられるか。
きっとろくなことが無いから多分今と同じように何も言えないだろうな。
こんな力、本当に無駄だ。
もう一度だけ振り返ったら、今度は錫来の横にお母さんらしき人が立ってるのが見えて、え、と声が出た。
「ん？」
山本が俺を見上げる。
「錫来の……お母さんって……錫来より細くて錫来より髪が長くて、明るい茶髪で……えっと」
「もしかして、みなちゃんと一緒にいるの？」
「うん」
山本ががっくりと肩を落とした。
「ひとりじゃないならまだ……」
そう言ったあと、山本は静かに涙をポタポタ落とした。
俺は何も言えなかった。
何にも。
俺は、無力だ。
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かき - このシリーズ大好きで何度も読み返してます！更新応援しています！ (10月28日 21時) (
レス) id: 1a835ab69b (このIDを非表示/違反報告)
みい(プロフ) - 一気読みしてしまいました！よしのさんの小説は本当に読みやすくて感情移入しやすいです！更新楽しみにしています！ (2023年3月4日 18時) (レス) @page37 id: 35d5ff39db (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - 遅くなりましたが読みにきました♪あ〜面白い〜よしのさんの描写が分かりやすくて頭の中で勝手にドラマ化されています＼_(･ω･`)ｺﾚ大事！続きをのんびり待ってます٩( 'ω' )و (2023年2月26日 13時) (レス) @page37 id: b010e36986 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 翔さん＆よしのさんおめでとうございます！この佳き日に二作同時に読めるなんてこちらこそプレゼントありがとうございます！翔さんとヒロインちゃんがどんなこと話してたのか知りたい！雅紀君にはどんな色が見えたのかな？桃色桜色？パチパチ弾けたソーダ水な？キュン (2023年1月25日 15時) (レス) @page37 id: 8b85446469 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 櫻井さんとヒロインの色恋もみたいかもーなんちゃって笑笑よろしくお願いします❕ (2023年1月22日 7時) (レス) @page32 id: 616dc38d65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年8月31日 7時
