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「ごめん……」
大野さんが謝った。
走ってその場から去ろうとしたら、向こうから職場の人が何人かパラパラと歩いてきた。
泣いてるのちょっと見られたくないな。
と思ったのに。
噂をすれば影。
涙を拭った瞬間を最悪なことに、先輩に見られてしまった。まだ残ってたのか先輩。
「Aちゃん？どうしたの？」
先輩が軽快にタッタッタと走ってきて私の肩にぽんと手を置いて顔を覗き込む。
「せんぱい……」
「どうした？早速大野さんと喧嘩したの？」
「……ちがいます」
「どうしたー？」
先輩が私の頭をわしわしと撫でて、胸貸そうか？って笑いながら言った。
私はなんで泣きたいんだろう。
わかんない。
「なんか、大野さんのせいで……胸がすごく痛くて」
「あはは、それ大好きってこと？」
「ちがうもん」
「どうしちゃったんだよAちゃんー。飲みに行く？話聞こうか？どうせ俺、今晩も飯無いだろうし」
「……」
先輩の顔を見上げる。
あんなに大好きだった先輩に誘われた。
大野さんの言うとおり、これはチャンスだ。
なのに。
どうして全然先輩がキラキラして見えないんだろう。
どうして胸に飛び込んで泣きたいと思えないんだろう。
どうして、この手と繋ぎたいと思わないんだろう。
もしかして、たった数日で私の心は完全に他の人に向いてしまったのでは？
「どうする？行く？」
「あの、」
断ろうと口を開きかけた瞬間、後ろからすごい強さと勢いで腰を抱きかかえられて、その衝撃でくの字になって先輩から引き離された。
「うぐっ！」
「やっぱダメ！これ俺の！」
「うえ、げほ」
胃のあたりに思いっきり入ってその衝撃で苦しんでいても背後の声の主はガン無視。このひどい扱いは間違いなく。
「大野さん、Aちゃん苦しそう！」
先輩がアハハと笑った。
「今Aのこと、誘った？」
「うん」
「絶対駄目、ふしだらな関係になる」
「ふしだらな関係って何！」
先輩が笑ってる。
「ふりんとか」
「そんなの俺が誘っても無理だよー、Aちゃんは曲がったことが嫌いで真っ直ぐなとこが良いところなんだから」
そう思ってくれてたんだ。
先輩は人のいいところを見つけるのが得意だ。
そういうとこが、好きだった。
……過去形。
「Aのこと、よくわかってんね」
大野さんの声が少し申し訳なさそうに響いた。
「ん？うん。だから、裏表がなくて同じく真っ直ぐな大野さんとお似合いだと思ってる」
先輩がなんだか誇らしげにそう言った。
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ああ(プロフ) - 面白かった…!明日早いのに最後まで読んでしまいました。ありがとうございます (2022年6月27日 2時) (
レス) @page49 id: 332a1fd98b (このIDを非表示/違反報告)
あきら(プロフ) - たまらなく幸せな気持ちになれました…よしの先生の書かれる大野さん大好きで何度も読み返してます。素敵なクリスマスのおそそわけありがとうございます。 (2021年12月25日 21時) (レス) id: 65b0e8ea2e (このIDを非表示/違反報告)
羊羽。（よう）(プロフ) - メリクリ〜☺クッソ面白かったよー。完結乙でした！ (2021年12月25日 17時) (レス) @page49 id: 07dccdc548 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ(プロフ) - よしのさん、メリークリスマス🎄そして完結お疲れ様でした。不器用で大きな優しさの大野さんにキュンでした〜( ´艸｀)ありがとうございました！新作もおにぎりも楽しみに待っています。ご無理なさらずよしのさんのペースで！ (2021年12月24日 11時) (レス) @page49 id: 7572200b1c (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 大野君が課長たちに啖呵切ってくれたところ、カッコよかったですね。それと、おにぎりが恋しいです。 (2021年12月18日 5時) (レス) @page44 id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月29日 16時
