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「……」
じわわ。涙出てきた。
嬉しいのとびっくりしたのと恥ずかしいのとで、ぎゃーって泣きたい。
「泣いてんの、A」
「見るなー！」
「あはは」
大野さんが楽しそうに笑って、ヨイショって起き上がる。
「……よし、買い物行こ」
「まさかベッド……？」
「カレーの材料」
「あ！そうでしたね！忘れてました！何買います？」
「ローリエとクミンとターメリックとガラムマサラと
チリペッパーと、あとは鶏ガラと……」
「え……チキンか牛かを聞こうとしたのに……」
「買い物行こ。そんで家も買いにいこ」
「わー！スパイスと家を同列に語らないでー」
大野さんがふわふわ笑って脱力した。
「だめかー」
「まぁいっかー、家も見に行きます？」
「あと仕事も探しに行かなきゃ」
「仕事もね。そうですね」
「でもまぁ、仕事とか家は他にもあるけどAは他にいないからね、コンカツされる前でよかったよホント」
うっ。
もしかして意外と大野さん私のこと好きなんですね！
めちゃくちゃ嬉し……
「だってAおもしれーもん」
面白い？理由はそれ？
「私面白いですか……？」
「うん」
「……可愛いとかじゃなく……」
「ん、じゃあ買い物行こっか、カレー作る時間無くなる」
「え、待って？何時間煮込むつもりですか」
「最低5時間は欲しいかな……」
「えーー！まぁいいけど！」
「すげえ適当」
大野さんが立ち上がって私を見下ろした。
「いくよ」
「はーい」
慌てて出かける用意をしてカバンを持つ。
玄関で一瞬部屋を振り返って、何か小さな違和感を感じつつ鍵を閉める。
「どした？」
「あ、大丈夫です、どこいきます？」
「不動産屋からかな？」
「本気で言ってます？」
「ほんき」
「えー」
駅前まで歩いて来て、昨日のあの古書店が見えた。
貼り紙が見えて足を止める。
『当店は誠に勝手ながら閉店いたしました
長らくのご愛顧ありがとうございました』
「……あのおじいさん……まさか塩あんぱん喉に詰まらせて……」
「A、どうした？」
ふと。家を出る前に感じた違和感にやっと気づいた。
私、テーブルの上に置いたあの『本ふなかひがね』、片付けたっけ？テーブルの上になかったような。
考え込む私に大野さんが私の目を覗き込んだ。
大野さんの目に綺麗な空が反射する。
「……まぁいっか」
「ふふ、行こ」
大野さんが、微笑んで、ん！と言って手を伸ばす。
叶った願いをその手にぎゅうっと握りしめた。
── 終 ──
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ああ(プロフ) - 面白かった…!明日早いのに最後まで読んでしまいました。ありがとうございます (2022年6月27日 2時) (
レス) @page49 id: 332a1fd98b (このIDを非表示/違反報告)
あきら(プロフ) - たまらなく幸せな気持ちになれました…よしの先生の書かれる大野さん大好きで何度も読み返してます。素敵なクリスマスのおそそわけありがとうございます。 (2021年12月25日 21時) (レス) id: 65b0e8ea2e (このIDを非表示/違反報告)
羊羽。（よう）(プロフ) - メリクリ〜☺クッソ面白かったよー。完結乙でした！ (2021年12月25日 17時) (レス) @page49 id: 07dccdc548 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ(プロフ) - よしのさん、メリークリスマス🎄そして完結お疲れ様でした。不器用で大きな優しさの大野さんにキュンでした〜( ´艸｀)ありがとうございました！新作もおにぎりも楽しみに待っています。ご無理なさらずよしのさんのペースで！ (2021年12月24日 11時) (レス) @page49 id: 7572200b1c (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 大野君が課長たちに啖呵切ってくれたところ、カッコよかったですね。それと、おにぎりが恋しいです。 (2021年12月18日 5時) (レス) @page44 id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月29日 16時
