恐怖症 ページ44
「まさか……大野さんと……？」
何を勘違いしたのか知らないけど櫻井さんが狼狽した。
「松本さんは駄目で大野さんはオッケーな理由はなんですか？」
「だって智くんは……俺の気持ち知ってるし……」
「櫻井さんの気持ちって何ですか？」
「……あ、」
櫻井さんがふと目をあげる。
「え？」
「……光った」
櫻井さんが窓の外をじっと見て、何かを待ってるように首を傾げた。
遠くに、ゴロゴロゴロ、と雷の音がした。
「雷」
「……！」
逃げなきゃ。
どこに？
突然襲われる強烈な不安にしゃがみこむ。
突然、空が真っ暗になって雨がポツポツ、と降り始めた。
雷の、地鳴りのような音が遠くに響いた。
そろりとソファに這い上がってクッションを抱きしめて三角座りになって目を閉じる。
「A」
櫻井さんの声にビクッと反応したら櫻井さんが私の隣にぽす、と座った。
「俺高いとこ怖くてさぁ」
「……知らなかった」
「うん。手に汗いっぱいかいて、手すり持っててもその手すりが手汗で滑るという悪循環」
「あぁ……ちょっとわかる」
「理屈じゃないよな、慣れるものでもないし。あの恐怖は死と直面したときと同じだと思うよ、慣れるのは逆によくない、死の恐怖は持つべきだと思ってる」
「ふふ」
「A、高いところは？」
「平気、ちょっとゾワゾワするけど」
「そのゾワゾワが嫌なの！」
「あは」
櫻井さんは馬鹿にしないのね。
今までの彼氏はみんな、私が怯えると、馬鹿だなぁって笑ったり、無理矢理雷の中外に連れ出してほら平気だろ、とか私を揶揄ったりした。
ザアアア、と雨が強く降ってくる。
ああ、嫌な感じ。
ガタガタガタ、と風の音もする。
ピカッと光ったのが視界に入って体を小さくして耳を押さえる。
ドクン、ドクンと自分の心臓の音が大きく聞こえる。
「こんな感じだと……この季節辛いね」
「うん」
「仕事中はどうすんの？」
「仕事中は周りに人がいるしざわざわうるさいから……他のことに集中してるけど足はガクガクしてる」
「そういえば今……相葉くんところでバイトしてんだよね？」
そういえば就職したこと、伝えてなかった。
「あ、相葉さんの紹介で就職先決まったよ……」
「そうなんだ……そっか……」
「……うん」
「じゃあ、引越しも考えてる？」
「うん」
「……」
ザアアア、という雨の音。
遠くに聞こえる雷の音。
長い間があって、櫻井さんが少し笑う。
「……さすが、仕事が早いね」
優しい声。
胸が痛い。
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ちゃぼたん(プロフ) - 毎度楽しく読ませてもらってます。相葉さんの友達の社長、ってだけだととても怪しく感じるのに、その友達の名前が風間と言うだけで絶対的な安心感しかないですね(笑)しょーさんとおにぎりちゃんどうなるのかなぁ。次も楽しみにしてますね！ (2021年8月2日 18時) (
レス) id: 3a5d537559 (このIDを非表示/違反報告)
赤栗鼠(プロフ) - 更新ありがとうございます。何でこんなに行き違っちゃうの？胃がキューってなる切なさです>д< おにぎりちゃん出てっちゃうのかなぁ、、。続きが楽しみです。 (2021年8月2日 17時) (レス) id: c9ec236d7a (このIDを非表示/違反報告)
せいこ(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎回楽しみにしてます。翔さんと2人、絶対相性良いと思うので、どうかお互い素直になってゆっくり言葉交わして欲しいって思います。まだまだ楽しみなので待ってます！ (2021年8月2日 15時) (レス) id: 40a9623dcc (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - わーい！翔さんの独占欲出たー！続きが楽しみです！！ (2021年8月2日 9時) (レス) id: 0a1a6bc318 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 朝から幸せ！仕事前に読めましたー！風間社長の登場に更にテンションも上がりました。雅紀君良かったね♪おにぎりちゃん就職先も決まってしまった……カウントダウンが始まってるのかな……嫌だな早く素直になってぇー！翔さん早く伝えてぇー！ (2021年8月2日 9時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月16日 10時
