鬼の嫁になる女 ページ21
櫻井さんがこっちをチラリと見た。
「……もとよりこの命は翔さんに預けていますから」
「……」
「櫻井さんは私の命の恩人なんです」
「恩人……？」
「翔さんがいれば、私はそれだけで幸せなんです」
はぁ。
このため息は櫻井さんのため息だ。
「本気？一緒に背負う覚悟がある？」
お祖母様が私の方に手を伸ばした。
咄嗟に手を掴む。
「ええ。翔さんの背負ったものを、私に半分背負わせてください」
祈るようにそう言ったら、お祖母様が、あはは、と小さく笑った。
「鬼はね、とにかく美しいからね、仕事もできるが、酒も食らうし他所の女も寄ってくる、それでもいいの？」
「お祖母様はそういう場合どうなさったんですか？」
「鬼嫁と恐れられたね」
「あは」
私が笑うとお祖母様も少し笑った。
「やっと言える、鬼の嫁になる女にこれだけ言わないといけなかった」
「……それは？」
「鬼の血を継いだ者を……名を汚さぬように……悪ささせないように……しっかり見張って」
「……」
「もし仮に……鬼が暴れて血の味を知ったら……その時は鬼を殺してでも家臣と家を守れ、それが私達、嫁の役目」
お祖母様がそう言った。
「はい」
「水無瀬だったら何かあっても守ってくれる権力がある。けど翔が家を捨てたら何かあっても守ってくれる地位も権力もなくなる」
「はい」
「何も持たない翔を守れる？」
「もちろんです、命に代えても守ります」
お祖母様が櫻井さんに家を継がせたかった理由はこれだったのか。
もし鬼が血に酔って全てを失いそうになったときに、家臣を守るための地位と財産と権力が必要だから。
そしてその暴走を止めるのは妻の役目。
それが鬼に家督を継がせる意味と、嫁が水無瀬でなければならない理由だったのか。
だから、私が一人で櫻井さんを守れるなら、圭吾さんが馨子ちゃんと結婚してもいいってことだ。
「じゃあ。もう言うことは何もない、法的な手続きは翔と圭吾が自分でできるだろ」
「ありがとうございます……」
涙が込み上げてきた。
私は櫻井さんの妻にならないのに？
つまり、私は櫻井さんの奥さんになる人に、この言葉を告げるという役を与えられたんだ。
なんてこと。
「Aさん」
「はい」
「あの子をよろしくね」
「はい」
「疲れたから少し寝るわね」
お祖母様がふぅ、とため息を吐いて目を瞑った。櫻井さんがお祖母様に、また来るよ、と声をかけて、行こうかと私に声をかけた。
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ちゃぼたん(プロフ) - 毎度楽しく読ませてもらってます。相葉さんの友達の社長、ってだけだととても怪しく感じるのに、その友達の名前が風間と言うだけで絶対的な安心感しかないですね(笑)しょーさんとおにぎりちゃんどうなるのかなぁ。次も楽しみにしてますね！ (2021年8月2日 18時) (
レス) id: 3a5d537559 (このIDを非表示/違反報告)
赤栗鼠(プロフ) - 更新ありがとうございます。何でこんなに行き違っちゃうの？胃がキューってなる切なさです>д< おにぎりちゃん出てっちゃうのかなぁ、、。続きが楽しみです。 (2021年8月2日 17時) (レス) id: c9ec236d7a (このIDを非表示/違反報告)
せいこ(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎回楽しみにしてます。翔さんと2人、絶対相性良いと思うので、どうかお互い素直になってゆっくり言葉交わして欲しいって思います。まだまだ楽しみなので待ってます！ (2021年8月2日 15時) (レス) id: 40a9623dcc (このIDを非表示/違反報告)
たまりん(プロフ) - わーい！翔さんの独占欲出たー！続きが楽しみです！！ (2021年8月2日 9時) (レス) id: 0a1a6bc318 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 朝から幸せ！仕事前に読めましたー！風間社長の登場に更にテンションも上がりました。雅紀君良かったね♪おにぎりちゃん就職先も決まってしまった……カウントダウンが始まってるのかな……嫌だな早く素直になってぇー！翔さん早く伝えてぇー！ (2021年8月2日 9時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月16日 10時
