わかってるから ページ44
「あの、櫻井さん」
窓に頭をくっつけて目を閉じてる櫻井さんの腕を掴んだ。
目を見上げる。
櫻井さんが驚いたみたいに私を見下ろした。
「私の方こそごめんなさい！」
「え……」
「意地悪な言い方して本当にごめんなさい」
「いや、」
「今日松本さんをうちに連れて帰って来たのって、私が松本さんを気に入ってるからって気を使ってのことだったんですか？」
「……まぁ、婚約者ってのは嘘っていうのも伝えたかったし……」
櫻井さんがあっけにとられたまま私を見下ろして戸惑ってる。
言っていいのかな。
けど誤解されたままなのは困る。
「私が松本さんを素敵な人だな、って好意を抱いている一番の理由は櫻井さんのお友達だからです」
「……」
「松本さんが素敵な人だな、と思うにつれ、櫻井さんのことがもっと好きになるんです、松本さんが素敵であればあるほど、櫻井さんの評価も上がるというか」
「……あぁ、うん」
「櫻井さんのお友達と会ったり、櫻井さんの色んなことを知れば知るほど、櫻井さんが素敵だなと思えます」
「……うん」
「だから、松本さんのことは、特別という訳ではなくて……むしろ櫻井さんのことが」
「そっか、ありがと」
櫻井さんが遮るように言って、私の頭をぽん、と撫でた。
目はキラキラしてるけど、困ったなぁ、って感じで眉は下がって、段々口もへの字口になってきて、櫻井さんの手がストンと下に落ちた。
ああ、困らせてる。
困るんだ。
どんな形であれ、好きだと思われるのは重いんだ、きっと。
「……迷惑ですね、すみません」
櫻井さんが一つため息を吐いて口を開く。
「……あのさ、それって」
ああ、困る、って言われちゃう！
慌てて被せるように言う。
「あの！でも心配しないでください、好きというのは恋愛感情ではありませ……」
突然涙がこみ上げてきて言葉が途切れる。
「……」
「だから、大丈夫です、困らせないからまだ……あすかさんと一緒にいさせてください……半年間、ちゃんとやり遂げますから」
櫻井さんがうつむいた私の肩を掴んで、首を傾げて覗き込んだ。
「A？」
「すみません……」
「どうした？」
「……どうもしません……」
「大丈夫だよ、ちゃんと理解してる」
「……」
「追い出したりしないから大丈夫、それと恋愛感情はないってそんな何回も言わないでいいよ、わかってるから」
「……」
櫻井さんがそう言って、もう十分、わかってるから、って小さく呟いた。
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
