残念だなぁ(06/23) ページ41
どうしてこんな悲しいのかな。
楽しそうにラーメンをたべおえて、美味かったー！とかごきげんな櫻井さんを見て、つられて微笑んで、櫻井さんも少し悲しい顔をした。
「片付けます」
私が立ち上がったら、手伝うよ、と櫻井さんが言った。
「いいですよ、なんのために私がここにいるんですか」
「彼女役でしょ？」
「兼、家政婦です」
櫻井さんがそうだっけ？っていいながらテーブルに戻った。
私の片付けてる姿を見ながら、櫻井さんがポツリと呟く。
「Aには、幸せになってほしいだけなんだけどなぁ……」
ああ。なんてこと言うんだこの人は。
「私も。櫻井さんがきれいな奥さんと可愛いお子さんに愛されて幸せな家庭を築いてもらいたいなぁ、なんて夢見ます」
「それは……無理かな」
「残念です」
「Aもカッコイイ旦那さんと子供に愛されて幸せになってもらいたいな」
「それは無理ですね」
「残念」
櫻井さんとばち、と目が合った。
「……？」
「……」
無言で見つめ合って、私から目を逸らす。
「残念だなぁ……」
櫻井さんがそう言って目を閉じた。
これが恋だとしたら、
恋とは薄氷の上に立っているようなものだ。
戻れない。進めない。
少しでもバランスを崩したら氷は割れて、深くて冷たい湖の中に沈みこむ。
どんなに足掻いても、助けて、と叫んで空を掴んでも、誰も救ってはくれない。
落ちたあとは２つに一つ。
同じ湖に飛び込んで、寒くないよ、一人じゃないよ、って愛しい人に抱きしめてもらうか、あるいは。
身も心も凍って何も感じなくなるまで。
ひとり息絶えるまで痛みを堪え続けるか。
そして私はもう誰も好きにならないと誓ったのだから。
ひとり身も心も凍らせて痛みに耐える道しか残されていないのだ。
それならせめて、あなただけでもその湖に一人で沈みませんように。
そう願ってもあなたはそれを拒むと言うなら。
私で良かったら一緒に堕ちましょうか？
心までは温めることは叶わなくても、体は少しは温かいかもしれません。なんてことを。
「今日はあついな」
櫻井さんの言葉に少し笑う。
私の心が寒さに凍えそうになってるこのタイミングで暑い、なんて。
気が合うんだか合わないんだか。
「美味しいねって言い合いながら一緒に美味いもの食うのって身も心も温かくなるよね」
櫻井さんが笑いながらそう言って一瞬息が止まった。
ああ、だから。
あすかさんのそういうとこですよ？
そういうところが大好きなんです。
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
