恐怖に駆られた人間の思考回路 ページ30
「え、何しに？」
「Aを見に。松本くんからのお墨付きもらったからいいでしょ」
「どういうこと？」
「松本くんが会わせても大丈夫だって言ったの」
え？こんな早く？無理だよ。
「不安です！」
「大丈夫、任せとけ」
「でも！」
「櫻井さぁん」
「大丈夫大丈夫」
んもう。
仕方なく頷いたら櫻井さんがニコッと笑った。
「だから早めに誠治の方も片付けたい」
「……あの、母の送迎は」
「駄目です、断ってください」
「せめて連絡先を」
「連絡はすべてこちらを窓口にして下さい」
櫻井さんがもう一度名刺を私にくれた。
「……」
「行くなよ？」
「じゃあ、また公衆電話で連絡を」
「俺からしておきます」
「櫻井さん！」
「A、知らないだろうから言っておくけど」
「はい」
「人間って金が絡むと本性現すんだよ、逆ギレした人間がどんだけ面倒で危ないか知らないからそんな楽観的になるんだよAは」
櫻井さんが呆れたようにため息を吐く。
「でも……」
「今彼らが何を考えてるか想像つかないだろ？」
「……私がいなくなって清々してるんじゃ？」
「逆かな。いなくなってどの方面から攻撃されるかわからなくて怖くてたまらない。目の前にいたほうが何してるかわかるからね」
「……」
「恐怖に駆られた人間の思考回路はどうなるだろうね？」
「……わかんない……」
「危険から逃げようとする、動けなくなる、目を背け無関心になる、誰かに依存する、攻撃的になる、この5つ」
「……」
「最初の4つは勝手にしろ、けど5つ目。これだけは避けときたい」
「攻撃……？」
「Aさえいなくなれば自分の不安要素は消えてなくなる、Aさえ消してしまえば、という精神状態になったらどうする？ってこと」
櫻井さんがフフン、と疲れたように笑って、背中に嫌な汗が流れた。
「私さえ消せば……？」
「それは極論だけど。命に関わるようなことじゃなく、直接Aに会って暴力や暴言で慰謝料減額させようとする奴もいるからね」
「……なるほど、なんか面倒になってきた」
「それもあるあるだよね、面倒と思わせたら示談で済むから」
「……」
「Aはどうしたいの？慰謝料欲しいの？社会的に抹殺したいの？ただちょっと痛い目見せたいだけ？」
櫻井さんがワインを飲みながら、私を探るように見つめた。
「わたし、は」
「うん」
「土下座させたい……死ぬほど後悔して一生苦しんでほしい」
櫻井さんが可笑しそうに笑った。
酔うと眠くなる体質(06/20)→←お急ぎの場合は事務所まで
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
