奴の恋のものがたり ページ26
「勝手に連絡してすみません、だめでした？」
「まぁ、いいよ。行方不明者届出されたら困るしね。Aのうっかりのせいで最後のGPSの居場所この家になるから」
「……」
「この家にいた形跡があると分かれば警察がここに来る、調べたら男とふたり暮らししてる、しかも家出した次の日からとなったらAも浮気してたって思われても仕方ない」
「はぁ……」
「そうなったら不利なのはAだよ？わかってる？お金がほしいだけ？じゃないよね？社会的に制裁与えたいんでしょ？」
なんか怒られた。
しょんぼり。
「それで、実は母の来週の病院の付き添いに妹が行けないらしくて付き添いに行きたくて」
「いや、それは断って」
「……え？」
「タクシー使えって伝えて？Aは行かなくていい」
「どうして……」
「Aが今からやろうとしてることは誠治や妹さんに恨みを買うことってわかってる？」
櫻井さんが私の心を見透かすようにじっと見た。
「……」
「誠治は良くないパターンだ」
「というと……」
「自分の浮気を正当化して周りを抱き込む作戦に成功してる男なんだよ、会社でもそこそこ仕事ができて将来期待されてるかもね？」
「……そうです」
「うん。100%自分が悪いのにAのせいにして、Aを家から追い出すことにも成功してる。つまり自分は悪くない、むしろこれは正義だと思いこんでるかもしれない」
「……あー……」
「彼の中では恐らく、Aと出会ったのは運命の人と出会うための布石でしかない、運命の人は恋人の妹だったというストーリーなんだろうね」
げ。
私のしかめっ面を見た櫻井さんがフフン、と笑う。
「奴の恋の物語のあらすじを説明するよ」
櫻井さんがワインをテーブルにおいて腕を組んでソファに沈んで目を閉じた。
「あるところに男がいた。その男には恋人がいた。クールであまり感情を出さない彼女のミステリアスなところに惹かれ付き合う中で、彼女と結婚の約束をするに至る」
「……ふふ」
「彼女の家に挨拶に行ったとき、そこで彼は運命の出会いを果たす。彼女の妹だった。妹の……名前なんだっけ？」
「沙月です」
「妹の沙月は姉とは違うタイプで喜怒哀楽の感情を表に出す可愛いタイプ……なのかな？Aの口調ではそんな感じ」
「そうですそうです、私達顔以外似てませんから」
「顔は似てる？」
「はい。でも妹のほうが可愛いです」
櫻井さんがバカにしたように喉の奥で笑った。
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
