お母さん ページ23
「そんなこと言うわけない！そりゃ新婚の間は近くに二人で住もうと思ってたけど、ゆくゆくは2世帯住宅にするつもりで！」
「え、そうなの？」
「誠治もそれを知ってたはずなのに！なにそれ！」
「でも誠治くんも、僕は次男ですからこの家に入って沙月と一緒にお母さんのことも大事にしようと思ってますって言ってくれて……」
「そんな……」
「沙月さんはAと違ってお母さんのことちゃんと考えてて家族想いで優しいって……言ってたけれど……何か変よね……」
へなへなとしゃがみ込みたい気持ちを奮い立たせてなんとか立ってる。
誠治が最低過ぎて言葉が出てこない。
「ごめんねA」
「もういいの……お母さんのことだけ心配で……来週の病院、誰か付き添ってくれるの？」
「お母さん一人で行くよ」
「だめよ！前一人で行って帰り具合悪くなって倒れて入院したでしょ！」
「でも、大丈夫。誰にも頼めないし」
「沙月は？」
「…………」
一人で行けって言ったんだろうな。元気そうじゃんとか言ったんだろうな。誠治も何かあったら迎えに行きますねーくらいだろうな。
「私が行くから駅まで出てきて？」
「いいの？」
「一人では行かせられないし、会いたくないのは沙月と誠治だから。あの子達が送迎するなら私は行かないけど」
「A……」
「また前日に電話するね」
「あ、A、連絡先……」
「相談してから教えるよ」
「相談？」
「弁護士」
「弁護士！？」
「あ、切れそうだから。またね」
「A、ありがとうね、またいつでも電……」
がちゃ。
ツーツーツー。
受話器をそっと戻す。
体がじっとりと汗ばんでいて、息が苦しい。
「櫻井さん……」
なんだか無性に櫻井さんの笑顔に会いたくて、溢れてきた涙をぐっと拭った。
お母さんは、娘より自分のことが一番大事な人だ。そんなことは前からわかってる。
でも、私を信用できないくらい自分のことしか考えられなかったんだと思うと母も一人の弱い女だったんだなと、少し絶望して、その絶望も誠治への憎しみに変わる。
帰ろう。
櫻井さんに生ハムと、それに合うトマトやチーズやアボカドや、冷たいシャンパン用意して帰りを待つんだ。
一旦忘れよう。
そう思ったけど、うまくいかなかった。
本でも読む？
ホラーとかで気を紛らわせちゃおう。
本屋に寄って自分用の夕飯と明日の朝のご飯の材料を買って帰路につく。
帰ってきてホッとして、しばらく玄関で立ち上がれないままでいた。
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
