家族を大切にしてくれる ページ14
「そう言ってくれるだけで……」
「……」
「今となって思えば、モテる先輩に付き合ってと言われて嬉しかっただけで好きと勘違いしてた気もします……」
「……誠治のどこが好きで結婚しようと思ったの？結婚しようと思うくらいなんだから決定打があったでしょ？」
櫻井さんがまぐろユッケをパクリと食べて私をじっと見た。
「私の家族を大切にしてくれるとこ……とか」
「で？Aの家族は大切にしてくれて、Aは大切にしないとか笑い話かよ」
全然面白くなさそうに櫻井さんが笑った。
「……ですね……」
「……」
「……お母さんは病弱であんまり働けないし……沙月もバイトしかしてなくて……家族を大切にしてくれる人が旦那さんの条件だったので」
「で？その大切にしてた家族に裏切られてさぁ……」
櫻井さんが痛ましいものを見る目で眉間にシワを寄せて呟く。
「Aのことクールとかポーカーフェイスとかさぁ……マジなんなの……」
「あは、なんかもう……バカみたいですよね？」
「Aは馬鹿じゃない、馬鹿なのは……」
そこで言葉を切ってくれたのは、私が大切にしてきた人のことを軽蔑することに抵抗があったんだろう。
優しいひとだな。
「情けないですよね」
「でもさぁ、今まで必死に生きてきて、やっと寄りかかれる存在ができたと思ったらそんな奴でさ」
「…………」
「Aが俺のこと信用するかどうかはAが決めてくれていいんだけど」
「あすかさんのことは！」
「けど！これから先Aと関わる人間は俺が見極める。勝手に知らない奴と連絡先交換しないでね」
絶句。
ど、どういうこと。
「だから、このスマホ使って。松本くんの連絡先はここにもう入ってるから。あ、あと相葉くんとショップの連絡先も」
…………あれ？
なんか。
あれ？櫻井さんって。
「もしかして心配症……？」
「です」
「お兄ちゃんですか？」
「あはは！手のかかる妹だな！」
さっきまでのちょっと怖い櫻井さんが消えて、いつもの陽気な櫻井さんになってホッとした。
「明日は生ハムとシャンパンですか……？」
「モツ鍋届くのって水曜だったかな、じゃあ生ハムは明日にしようかな」
「水曜たのしみ」
「水曜は7時に帰る」
「嬉しい！」
私がついはしゃいで、櫻井さんがそんな私を見て、一瞬笑顔が消えて真顔になった。
「え」
「俺も楽しみ」
そう言った顔はもういつもの櫻井さんで。
私は何か重要なことを見落としているか忘れている気がした。
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さや(プロフ) - よしの様！2章お疲れ様でした。凄く丁寧に描写頂いて楽しいです！個人的には長編嬉しいです。毎回思います。終わらないでほしいと…では、また3章に行ってきますm(__)m (2021年6月23日 20時) (
レス) id: 04f741953d (このIDを非表示/違反報告)
ukyo(プロフ) - モツ鍋の〆と、その先が気になります。お互いの何となくな感情が苦しいですね。続き楽しみです。 (2021年6月21日 4時) (レス) id: fa3b80409d (このIDを非表示/違反報告)
JPN39(プロフ) - まさかのほくろの位置と顎の傷がドンピシャで自分と一緒でいつも以上に妄想に力が入りましたごちそうさまです！！！よしのさんの小説読んでると自分は櫻井担なんじゃないかと思い始める相葉担より(つまりよしのさんの小説大好きです←これが言いたかった) (2021年6月20日 21時) (レス) id: a734455ab7 (このIDを非表示/違反報告)
Kewpiechan(プロフ) - あー苦しい。ちと切ない。感情移入しちゃって大変です。よしのさんの書かれる文章大好きです。 (2021年6月20日 21時) (レス) id: 9442e8a7d3 (このIDを非表示/違反報告)
あきこ(プロフ) - いつも楽しく読ませて頂いてます！よしのさんの作品、何度読んでも大好きです！！ (2021年6月20日 19時) (レス) id: 4cb7b4484f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年6月6日 8時
