36(01/31) ページ36
友情のままでいたかったら、私はここで、
「すまぬ！慰めありがとう心の友よ！」とか茶化して櫻井くんの腕を振りほどくべきだった。
それをしなかったのは、長い間一緒にいたのに櫻井くんの腕の中がこんな心地いいとは知らなかった衝撃からだろうか。
それは櫻井くんも同じように思ったようで、いつでも解けるように軽いハグのまま、腕の力を強めたり弱めたりした。
沈黙に耐えきれなかったのか、櫻井くんが腕をするりと解こうとして、私は慌てて胸の中にしがみついた。
「もう少しこのまま……今だけでいいから」
思わずお願いした。
それくらい、櫻井くんの腕の中は心地よくて安心できてドキドキして。
何よりさっきまでの死にそうなくらい寂しい感情が癒やされていくみたいだった。
「……あーあ」
櫻井くんの、後悔に似た大きなため息。
「……」
「吹雪の中凍死してでも帰るべきだった」
「……え、あ、ごめ……」
やっと申し訳ない気持ちになった。
櫻井くんは泣いてる私が可哀想でほっとけなくて、迷子の子供をよしよしする感覚で私を抱きしめたんだろう。
名残惜しい気持ちで櫻井くんの胸を両手で押し返す。
「ごめんね、ありがとう、寂しくて死にそうだったの少しマシになった、もう平気！」
「……」
「人肌って落ち着……」
目を上げて櫻井くんの表情をやっと見た。
きっと呆れてバーカ、って困ったように苦笑いしてるんだろうなって。
だから私も、失敗失敗、ってテヘヘみたいな顔を作って見上げたのに。
まさか。
櫻井くんの方が私より苦しくて堪らない思い詰めた表情をしてるなんて。
そんなこと、誰が想像した？
涙目の櫻井くんに激しく動揺する。
「櫻井くん……？」
「ごめん、ほんと、ごめん」
「え、え？」
「ごめん」
そう言って、櫻井くんが私の頭をふわりと抱き寄せる。
逃げるのは簡単だった。
それくらい柔らかく私の頭を包み込んだ。
なのに。
なのに、私は櫻井くんの唇がゆっくりと私の唇に重なるのを逃げないどころか。
先に瞳を閉じてしまうという愚行をおかした。
迷うように微かに触れた唇だったのに、私が全く拒みもしなかったことで櫻井くんの戸惑う気配がした。
ゆっくりと離された唇を瞳で追いかけて、え、もう終わり？みたいな顔で櫻井くんの目を見返したら。
櫻井くんは今度は迷わなかった。
堰をきったかのように、ちょっと激し目の大人のキスで私の唇を迎えに来た。
キスして泣けてくるなんてどうしちゃったんだろう私。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1894人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuuuuuuuuri1226(プロフ) - 8ページの深呼吸のところが新呼吸になってます！ (2021年3月7日 0時) (
レス) id: a7c2ae121f (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 更新に全く気が付かず出遅れるとは！越えたかー！越えてしまったのかー！ここから友情に…むっ難しい…どうなるんだろうか…ドキドキ (2021年2月1日 23時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - キュンが止まらなくて困りますよこんなの！次も楽しみにしてます！！！！ (2021年1月31日 16時) (レス) id: 1b6c03fa67 (このIDを非表示/違反報告)
さと(プロフ) - もうドキドキが止まらない！サイコーです。よしのさんありがとう！ (2021年1月31日 16時) (レス) id: 97bb53cb68 (このIDを非表示/違反報告)
shi(プロフ) - よしのさんありがとうございます！！翔さんありがとう！！切ない気持ちがまたいいですね！移行通知くるの待ってますね(^^) (2021年1月31日 12時) (レス) id: 4f699932a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年1月25日 0時
