〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ14)

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会議室に戻る。
皆が会議室のホワイトボードに私が昨日書いたメモと同じ事件の概要を書いていた。

「おかえりー」
「はーい」

『盗聴器は？』

ホワイトボードの空いたところに書いたら二宮さんが『そのままにしてる』と筆談で答えた。

「事務長の河東さんにお話聞こうと思ったんだけどいらっしゃらなかった」
「そっか。何かわかった？」
「邨田さんの失踪前、河東さんが最後に話してたって報告上がってない？」

多分無さそうなんだけど。
松本さんが合わせてくれた。

「これ？」
「金曜の夜、仕事を終えた邨田さんが河東事務長に辞めたいと伝えていたのところを目撃されている」

ホントは何も書かれていないのだけど皆に目配せをした。

「その後、旧館の方に向かって歩いている目撃を最後に邨田さんは消息を絶っている」
「うん」
「週末に映画を見に行く予定だった人の話は聞けそうなの？」
「それが……その彼の居所が不明なんだよね、大阪の実家に聞いたら東京で男性とふたり暮らしをしてるらしい」
「パートナーシップ制度のあるところにいるかもしれない……」
「……へ？」
「映画に行く予定だったのは邨田さんの恋人だったんだと思う」
「……なるほど……」

全員が一様に納得したような顔をした。

「邨田さんと最後に話したのは河東さんの可能性が高いから。話を聞きたかったのにいらっしゃらなくて」
「そっか」
大野さんが小さくため息を吐いた。

「邨田さんの失踪は河東さんが関わってるかもしれないから話を聞きたかったのに」

「じゃあ、今からどうする？」
二宮さんがみんなに聞く。

「何か手がかりがないか旧館に行ってみようか、倉庫のあった場所の確認もしたいし」
「今何時？」
「6時少し前」
「日が落ちる前に……」
「でも天気が悪いから懐中電灯持っていこう、多分すぐ真っ暗になる」

みんなそれぞれ誰に言うでもなく確認しあって、会議室の外に出る。

歩き始めたら、櫻井さんがトン、と指先で私の方を叩いた。

……盗聴器を仕掛けたのが河東なら、多分俺らの会話聞いてたよな
……うん。聞かせてやろうと思って。
……気が重い……俺廃病院の中にご遺体が埋まってるかもと思うだけで行くの嫌なんだけど。
……うん
……お前怖くないの？
……怖いのは霊よりも悪意に取り憑かれた人間。

櫻井さんが頷いた。

……俺の勘が正しいなら
……うん。
……鎌の男、つまり河東が動きだす。
…………うん。

体がブルリと震えた。