切ない幸せの王子 ページ22
部長温厚なのに娘のことになると目の色変わっちゃうんだ、可愛いな。
「その部長から内々に話が来た」
「え、櫻井さんのこと怖いのに？」
「うん。それを圧して来た」
「何？」
「A、俺の名前使って、パスワードのこと部長に言ったんだろ、時々変えろって」
「うん」
「俺に、何か気づいてるんですか、自分もおかしいなって思うことがあってって言ってきた」
「……えっ、何？」
「最近、開発部のパソコンに外部からアクセスしようとする……所謂ハッカーがいる気がするって。あの人ああ見えてサイバー攻撃とかに詳しいから」
「へぇ……」
櫻井さんが私をじっと見た。
「喧嘩してる彼女を待ち伏せする彼氏として開発部に行くよ、言い訳のために利用させてもらうけどごめん」
「うん……」
「それを解決したら晴れてAは自由の身、少しだけ我慢して」
「ん。……次の契約更新はしないつもりだから、もう会うことはないよ。私半年以上同じところにいる気はないの」
私がそう言ったら櫻井さんが、一瞬ハッと息を吸い込んだ。
「ねぇ、A？ずっと思ってたんだけどさ、結婚するつもりがないなら、ちゃんと就職したほうがいいよ」
「……」
「……最低でも退職金が貰えるところで働くべきかな、と。あとさ、もしものときに休職扱いしてもらえるところ」
「うん」
「例えば……病気や事故で入院したら、その間の収入がないのは困るだろ？貯金なんてすぐ底をつくよ」
櫻井さんが真剣にそう言った。
「そうだね」
「綺麗事を言うようだけど」
「……うん」
「俺が好きだと思った人はみんな……幸せになってほしいって思ってんだよ」
櫻井さんが、きれいにニコッと笑う。
「うん、そうだね。私もそう思うよ」
私も笑ってそう言ったら、櫻井さんが初めて見せるような、優しいけどちょっと悲しそうな目で私を見た。
「俺こんな気持ちになったの初めて」
「ん？どんな気持ち？」
「最近流行ってるちょっと切ない歌に感情移入するみたいな、ってわかんねーよな。俺バカみてぇ…」
「歌……？」
「うん。知ってる？」
櫻井さんが鼻唄で歌ったメロディは、街の中でよく流れてる曲で。
歌詞を知りたいと強い衝動に駆られる。
「知らない」
「そっか。今言ったこと、忘れていいよ」
「……」
その後櫻井さんは、もう意味のあることは何も話さなくなった。
指の間から想いの砂がサラサラと流れ落ちる。
私達は。
出逢っちゃいけない運命だった。
そんな気がした。
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いろは(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！！TwitterのフォローをさせてもらったのですがDMが送れずこちらから送らせてもらいます。SUZUIROというアカウント名です！ (10月5日 20時) (
レス) @page47 id: 7b03d9df09 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 完結、おめでとうございます！よしのさんのお話はいつも楽しく読ませていただいています！ (2020年3月25日 20時) (レス) id: 29ae961861 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - よしのさん、こんにちは！とにかく、とにかーく面白かった！一気読みしました！久しぶりに朝方まで（徹夜に近い）読んでいました。もう本当に読むのが楽しいってこういうことなんだって思いました！ (2020年3月10日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - おもしろかったー！一気に読みました！読後感がスカッと爽やか(^O^) ありがとうございました！ (2020年3月1日 9時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
mikoto020707(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしてました。終わってとても寂しいです。両思いになってからも櫻井さんが振り回される続きが読みたいです。よろしくお願いします。 (2020年2月27日 9時) (レス) id: 285ed8c737 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月11日 8時
