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櫻井くんが、淡々とそう言った。
「……」
「でももうこっちが運命なんだからニノのことは諦めたら？」
「もうとっくに終わっ……」
「終わってねーだろ」
「……」
「俺と紫織の関係もお前らと一緒って言った瞬間からAおかしいもん」
「……」
「もうどうでもいい関係だったら、へえ、そうなんだ、で終わりだろ。じゃあ紫織と俺も終わったんだねー、で済む話じゃん」
「……」
「でもAは俺が絶対紫織に行っちゃうって確信あるんでしょ？」
「……あ……」
「なぁ、わかってる？お前の発言、全部鏡になってるってこと。お前ニノの方に行っちゃうってことじゃん」
櫻井くんが私を立たせた。
暖かい部屋の中に入れて、櫻井くんのダボッとしたスウェットを私にかぶせた。
私の髪をゴシゴシして、指でするりと梳く。
その一連の行動が手慣れていて、誰にやってあげたの？って心にモヤモヤが広がる。
「ドライヤーこっちに持ってくる」
「自分でやる」
「いいよ」
櫻井くんの背中を見送って、さっきまで抱き合ってたベッドに目を向けて。
また心が悲鳴を上げた。
「誰にも行かない……」
「……」
「櫻井くんが好き」
「自分に言い聞かせてんの？」
「違う！」
櫻井くんがドライヤーに、かち、とスイッチを入れて、ゴーって、私の髪を乾かしはじめた。甘やかされてる。
口の中に入ろうとした髪を櫻井くんが指先ではらって耳の後ろからうなじにかけてすうっと撫でた。
ぞわぞわ、って電流が背中に走って体を少し縮める。
髪を梳いていた手が、私の頬を撫でて、その手が肩からずり落ちそうになっていたスウェットを辿って。
櫻井くんの右手はスウェットの中に滑り込んで私の体を直に撫でた。
ガタン。
ドライヤーが落ちた。
「あ、」
「A」
背中からぎゅうう、って思い切り抱きしめられてる。
櫻井くんが、まだ生乾きの私の髪の中に顔を埋めて、また小さく震えるため息を吐いた。
「でも、ニノのやつ、また海外に好きな女取られるんだ。ざまあみろ」
イヤ、って嗚咽とともに、涙がボロボロ零れ落ちた。
私は何がこんなに哀しくて苦しくて泣いてるんだろう。
「泣くなって……」
「櫻井くん、ごめんなさい」
「それは……何に対するごめん？」
振り返る。
櫻井くんの瞳は、何かの衝撃があればその瞬間に零れ落ちそうなくらいの水分が湛えられていて。
私が、櫻井くんが好きって呟いたら、その言葉に反応してぽたりと、落ちた。
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みい(プロフ) - ふと読み始めたら止まらなくなってしまい、最後まで完走してしまいました(明日仕事なのに起きれるのか私…笑) すれ違いに心がキューッと切なくなりながらも、みんながどうなっていくのか読み進めていくことがとても楽しかったです。素敵なお話を有難うございました。 (2022年4月21日 2時) (
レス) @page33 id: d3369a3b66 (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 久々にこの話を読みたくなって開いてみたら1ページ目から物語の中へどっぷり入り込んで止まらなくて。初めの方からずっと涙ボロボロでした。この話を映画化してほしい！よしのさん、天才！素敵なお話を読ませて頂いてありがとうございました。 (2021年5月16日 19時) (レス) id: f6253f81d3 (このIDを非表示/違反報告)
ちい(プロフ) - おすすめに出てきたお話を何気なく読み始めたらまあ面白くて。読み進めるうちに面白すぎて夢中になって一気に読み終わりました。途中でよしのさんの作品でだと気づきやっぱりと思いました。今回もホントに良くて、後半涙が零れました。素敵な作品に出会えて嬉しいです。 (2021年3月18日 21時) (レス) id: 40fb126c86 (このIDを非表示/違反報告)
つ(プロフ) - はじめまして。おすすめ欄にvirtual Loveが出てきて読みはじめたら沼にハマってしまいました。よしのさんの過去の作品いくつか読ませていただきました。読んでるうちにすんなり感情移入してしまってニヤけも涙も止まりません。更新、引き続き楽しみにしてます！ (2020年2月9日 16時) (レス) id: 856fd99ebf (このIDを非表示/違反報告)
yuri(プロフ) - 何度目かの読み返しです。でもやっぱり目がパンパンになるぐらい泣きながら読みました。でも、最後はほっこりと暖かい気持ちになれました。ありがとうございました。 (2020年1月24日 18時) (レス) id: 7db8fcf7f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月23日 0時
