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「そこまで思われるって凄くない？」
「うん」
「そこまで思われる人ってどんな人？おねえちゃんみたいな？」
櫻井くんがコーヒーを飲みながら宙を見た。
「何かに一生懸命になってる姿ってのはすげーキレイだったりするじゃん？……それに盗られたみたいな感じになるというか」
「……盗られた？」
あは！って笑ったら櫻井くんが苦笑いした。
「うん、そういうのない？」
「あ、でもわかる！サッカー部とか一生懸命練習してるところ見て、キラキラしてるなぁって。サッカーには勝てないなぁって思ってた」
「……」
櫻井くんが私をちらっと見た。
あ。
ちょっとまって。
私今ポロッと本音が。
「例えばの話ね」
「ああ、うん」
櫻井くんは別に気にした様子もなくそのまま話をすすめる。
「自分にはこれがあるって持ってるやつは強いよなぁ、俺もサッカー続けたかった」
「もうやらないの？」
「本気ではもう無理かな。誰か趣味でサッカーかフットサルやってたらいいのになぁ」
「あ！松本くん、ダンスチームの子とたまにフットサルやるって言ってた！」
櫻井くんがちょっと考える顔をした。
「ね、繋げてよ、松本くんと」
「もうお友達じゃなかったの」
「……」
「友達の友達ならもう友達だよ」
「俺ら、友達？」
「うん？」
「……なぁ？」
櫻井くんが、悲しい顔をした。
「ん？どうしたの？」
「さっきはごめん」
「何が？」
櫻井くんが膝を抱えた。
「ん？」
「……」
「なに？」
「蒸し返すのやだな」
「何？」
「いや……俺お前に無理矢理……」
「あ……」
しーん。
そうだ。
あの後泣いたりお昼寝しちゃって記憶の奥に仕舞い込んでた。
「私、そういうのも……好きな人とやるべきだと思うの……」
「だよな」
「でもお姉ちゃんはもう無理だし、誰でもいいや、ってことなら……私お姉ちゃんの代わりになってもいいよ」
櫻井くんが膝を抱えたまま、動かない。
「その代わり」
「その代わり、……俺はニノの代わり？」
「違う……おばあちゃんの……」
櫻井くんが、私を見た。
痛くて痛くてたまんないよ、って目で。
櫻井くんが私の手を握った。
「取引成立……かな」
「……」
「でも無理強いはしないから心配しないでいいよ」
「……ん」
「便宜上付き合ってることにしていい？」
「櫻井くんはいいの？お姉ちゃんにそう思われるの」
「紫織は前から俺とAがお似合いって言ってたから」
美しい私の姉は残酷だ。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月14日 14時
