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沈黙。
その沈黙を破るように、櫻井くんは見もしないテレビをつけた。
「今日バレエ行ってたの？」
「あ、その話もしなきゃ……ドイツ」
「ドイツ？」
「……」
櫻井くんが買ってきたコーラを飲んでる。
大人ならお酒飲んだりするとこなんだろうけど、私達はまだ子供だ。
「あのさ。俺妹と弟がいるんだけど」
「うん」
「あいつらのこと褒められたら、自分のことより嬉しかったりすんの」
「……ああ。そうだね、ちょっとわかる」
「わかる？だから好みだ、とかキレイだ、とか褒めることは……間接的にお前を褒めてることになるって思ってたんだよなぁ……」
「……」
「でもさ、知らなかったんだよ、散々比べられてコンプレックスになる可能性があることを、俺は考えもしなかった」
「櫻井くんは出来のいいお兄ちゃんの方だからね、きっとわかんないよね」
櫻井くんは切ない目で私を見下ろした。
「長子の苦悩は下にはわかんねーよ」
「……え」
「そういう意味で、紫織とは気があった」
「うん」
「紫織とお前ちょっと似てんじゃん？話し方とか声もそうだし」
「……うん」
「何回もA、って呼び間違えて、いい加減にしろってぶっ飛ばされた、その日から、紫織に敬称つけんのやめた」
「……お姉ちゃんとどういう関係だったの？」
「え、それ聞く？お前俺のこと最低って言うだろうから言いたくない」
櫻井くんがムスッとした。
「じゃあ言わなくていいよ？」
私がそう言ったら、は？って、信じられないものを見る目で私を見た。
「言いたくないんでしょ？」
「けどさぁ、は？普通気にならね？」
「なるけど。櫻井くんの気持ちの方が大事だもん……」
「そういうとこだよなあ」
櫻井くんが膝を抱えて片目だけ私の方を見た。
「なに？」
「お前のそういうとこ好き」
ひっ、て喉が鳴った。
卒倒する。
「急にそういうこと言わないで……」
「……わかった、言わない」
なんだか力が抜けた。
そおっと、櫻井くんの胸におでこを寄せる。
「ん？」
「……」
「ん？抱っこする？」
「……いい……」
「はーい」
頭をワシワシ撫でてくれる。
「櫻井くんは……お姉ちゃんのことだけを好きだと思ってたよ、ずっと」
「うん、だろうね」
「お姉ちゃんのことはいつから好きになったの？」
「……先生との関係を知ったあと……あれから紫織とは話す機会も増えてさ」
「うん」
「そこから、まぁ、色々」
櫻井くんが苦笑した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月14日 14時
