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しばらく泣き続けて、うまく息ができなくなるそのたびに櫻井くんが背中をぽん、って叩いてくれた。
そのたびに、呼吸が少し楽になって、だんだん嗚咽はもれなくなったけど、涙だけは重力に従って落ちていく。
私、30分は絶対泣き続けてた。
とうとう泣き疲れて、カクン、って睡魔に襲われる。
でも、流石に……寝るのは……。
「ん？……眠い？」
櫻井くんが気づいてくれた。
「……ん……ちょっと」
「泣き疲れたんだろ、ちょっと眠ったら？どうせお前、最近まともに寝てねーだろ」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった私を見下ろして、櫻井くんが、あはは、って笑った。
「うー……ごめ……」
「どんだけ溜め込んでたんだよ」
櫻井くんが私の顔を自分のスウェットパーカの腕でゴシゴシ拭く。
「櫻井くんの服、絞れる……」
「ほんとだよ、この辺すげー」
櫻井くんが上腕のあたりを摘んで笑ってる。
「風邪ひいちゃう……」
「大丈夫、お前あったかい。寒くない？」
「うん」
「寝てもいいよ」
「いい……？」
「ん、おやすみ」
その声が優しくてホッとしたら、ずるりと眠りに引き込まれる。
「……安心する」
「安心されるのは男としてどうなのか……」
「……」
「さっき襲おうとした男の胸の中で安心するAって馬鹿なんだな、でもまぁいっか……そういうところがAというか」
「……」
「馬鹿なやつ」
「……」
「馬鹿」
櫻井くんの低くてあったかい声が心地よくて、気づいたら眠っていた。
どれくらいたったのかな。
ふと、コーヒーの匂いで目が覚めた。
最初に入った空の色が朝焼けなのか夕焼けなのか判断できない。
ここは。
そっか。私櫻井くんの部屋にいるんだ。
時計を見たら時計の時間も5時で、混乱する。
「あ、起きた？おはよ」
櫻井くんが何気ないみたいに言った。
「おはよ……」
ムクリとベッドから起き上がって、乱れた服と髪を整える。多分顔やばいぞこれ。
「俺今からバイトなんだけど」
マグカップ2つ持って櫻井くんがよいしょ、とラグの上に座った。着替えてる。
そうだよね。私がびしょびしょにした。
櫻井くんはベッドにもたれ掛かって、ベッドに座ったままの私を見上げる。
「起こそうかこのまま置いてくか悩んだ」
「ごめん……」
「どうする？俺ん家ずっといてもいいけど」
「いや、流石にそれは」
櫻井くんが、んふ、と笑う。
「彼女に悪いからもうここには来ない」
私がそう言ったら櫻井くんが、あーと言った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月14日 14時
