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「櫻井くんは？楽しかった？フットサル！」
「うん」
櫻井くんが私を抱っこしたまま逆手で私の頬を撫でる。優しい笑顔。
「また櫻井くんがサッカーしてるとこ見たい」
「なんでだよ！」
「キラキラしてたもん、いつも笑って楽しそうだった。私ね、ボール片付けてるとこ見るの好きだったー」
「え、なんで？」
「くるんってリフティング始めて、何回か頭とかでポンポンってほらヘディング？」
「うん」
櫻井くんがアハハ、って楽しそうに笑う。
「そのあと、ぽーんってかごの方にむかって蹴るでしょ？で、櫻井くんがかごのとこにいる時は、転がってきたボール足でほら宙にあげて」
「うん」
「ポッケに手を入れたままかごに入れて！で、失敗して、遠くに転がっちゃって、わー！って言いながらあはは！って笑って」
「……」
「最後はみんなと手で拾ってた、サッカー大好きなんだなーって思ってた、……ずっと見てた」
「……うん」
「足で挟んでボールを宙に浮かせたり、すごいよね、あれ」
「……片付けるとこ、ずっと見てた？」
櫻井くんが、囁き声になった。
優しい声。
「うん」
「一年のとき？」
「一年のときはたまに。二年も三年のときは殆どずっと見てたかなぁ……」
「そうやってボール片付けながら遊んでる奴ずっと見てたってこと？」
「うん、楽しそうだなーってずっと」
櫻井くんが、はぁ、って息を吐いた。
そのあと、突然。
私をギューってまた強く抱きしめた。
「わわ！ん？櫻井くん？どうしたの」
「……あのさ」
「うん」
「あのボール片付ける係」
「うん」
「あれ……一年生の仕事だって知ってた？」
「え……」
櫻井くんが、ふ、って吐息だけで笑う。
「練習のあとって喉乾いてるし早く着替えて早く座りたくてみんな早く部室に戻りたいでしょ？だから片付けは一年の仕事」
「……え。でも櫻井くん……」
「うん。練習終わった後にリフティングしたり……そうやってボール片付けながら遊んでる物好きって……一人しかいなかったんだけど」
ハッとして、櫻井くんの顔を見上げた。
「俺のことずっと見てた？」
「……あ」
ああ、バレちゃう。色んなことがバレちゃう。
「それだけじゃないよ、試合とか、サッカー部……見るのが……」
「一つ聞いてもいい？」
「……やだ」
ああ。どうしよう。
逃げなきゃ。
「なんで俺見てた？」
「言いたくない……」
「言いたくない？どうして？」
観念する。
こうなったら。
半分だけホントのこと。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月14日 14時
