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身動ぎもせず櫻井くんの呼吸の数を聞いてる。
すやすや眠る櫻井くんの体温や、鼓動や、時々ピクリと動く唇や、吐息が。
心地いい。
傍にいてくれるだけで嬉しい。
痛覚さえ感じなければここは天国だ。
櫻井くんがすき。
さっきの、どういう意味かなぁ。
こんなに好きなのになんで？って。
Aじゃなくて、紫織って呼んだ後だったしなぁ。お姉ちゃんのこと言ったのかなぁ。
お姉ちゃんの真似したのに、バカって言われなかったな。私ほんとに馬鹿なんだな。
抱き合って眠るふたり。
このまま、永遠の眠りについて、私もう起きたくない。
私もつられてウトウトして、はっと目が覚める。9時半だ。
そろそろ起こさなきゃ。
起き上がって、櫻井くんの体を揺らす。
「翔くん」
「……ん」
「起きなきゃ、遅刻しちゃうよ？今9時半だよ」
「ん……」
「翔くん？起きて」
「……」
起きない。うーん。
ほっぺに人差し指をぷにぷに押してみた。
「櫻井くーん！」
「……ん」
「ほっぺにキスしちゃうぞ」
「……」
「くすぐっちゃうぞ」
「……」
「おきない……」
「ふふ」
あ！笑った！
「起きてる！櫻井くん！ほら！おめめ開けてー」
櫻井くんのほっぺを両手でコネコネしてたら、ぶふ、って笑った。
「起きてるのはわかってるんだぞーぅ！」
「うるせー」
「なんだとー！」
「A」
「なにー！わ！」
腕をぐいっ、と引っ張られて、ベッドにまた引きずり込まれた。
ギューって抱っこして、フー、ってため息吐いてる。
「こらー！はなしなさーい！起きなさーい」
「誰のせいで寝不足なのか分かんねーようだなお前」
「あのね。言っとくよ！バレエのレッスン中はスマホ見ない！先生の前でスマホ見たら怒られるの、そういうルール！」
「……」
「もし既読ついても、それ振り付けの動画とか見るときについ見ちゃっただけとかだから返事できるのはレッスン後！」
「うん」
「本当に切羽詰まった用事なら、教室に電話するか、会いに来てくれないと無理」
「……教室の場所教えて」
「わかった、教える、でもよっぽどの用がないと来ないで。みんなレオタードだからね」
櫻井くんがはーい、って返事した。
低い声。
「あと、昨日は返事できなくてごめんなさい、久々のレッスンで疲れてすぐ寝ちゃったの」
「楽しかった？」
「踊るのは好きだよ。悲しいことも辛いことも……何もかも忘れられるもん」
「……そっか」
櫻井くんがふ、と微笑んだ。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2019年1月14日 14時
