〇≠無の証明[番外編] (ページ9)

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要約すると、こうだ。

紫音くんの撮影は順調に進んでいた。
ところがある日、どういうわけかヒロインの妹で紫音くん妹役でもある新道朱莉さんが撮影に入ると異変が起こるようになった。

照明のライトが落下したり、新道さんのシーンで背後に人の気配がして撮影がストップしたり、新道さんの代役の子が怪我をしたりした。
全治三ヶ月の捻挫。

塩を盛ったりしたけど、その塩が翌日にはなくなっていたり、お札なんかも焦がされていた。

紫音くん兄弟の父親役も原因不明の高熱を出したりして、正直撮影は遅々として進まないようだ。

紫音くんは出番はあまりないけど、兄妹役の新道さんと絡むシーンが多いだけに、精神的に参ってる新道さんを放っておけないらしい。

新道さんと紫音くんのお姉さん役、ヒロインの女優さんは誰もが知ってる美人の女優の黒瀬ユイさん、と聞いて零課の皆がもしかして黒瀬ユイと会えるの？って感じで色めきたった。
勿論皆ポーカーフェイスのままだけど。

むぅ。
皆がそわそわしてる。
櫻井さんが『ウッソ俺前からずっと綺麗だなと思ってた、やべ』って思ってるのが結構はっきり聞こえてきて、ハァ？となった。

「一応、監督は、僕のこの前の事件をさらっと説明していて……そしたら、そんな課があるなら見てもらえたら、とのことで」
紫音くんが申し訳なさそうに言った。

「いいよ、暇だし、いこ」
大野さんがそう言った。

「んーと、じゃあ、翔くんと潤様子を見に行ってきて」
おおお。
大野さんが係長みたいに言った。

「俺らは？」
二宮さんが聞く。

「別件があるからそっち行って？隣の家から視線を感じる気がするやつ」
「わー……つまんない……」
二宮さんがぶーたれた。

「俺はお留守番。会議の資料……」
大野さんがつまんなそうに言った。

「私は？」
「Aは」
「はい」

紫音くんが私の顔を見て、来てほしいなぁって顔してる。
大野さんはそれを見て、ん、と頷いた。

「紫音くんと行ってきて」
「はい」

「やった！来てくれるの！」
紫音くんが素直に喜んでくれた。
紫音くんの背後で櫻井さんが、うげえ！って顰めっ面をした。
失礼な。

「行こ、ほんとに霊ならニノ呼ぶよ」
「りょーかい」
「じゃあ行きますか」

櫻井さんが車のキーを持って立ち上がった。
松本さんがコンタクトを外してメガネに変えた。

紫音くんがホッとしたように微笑んだ。
チラッと背後を振り返ったら、大野さんが眠そうに欠伸をしていた。