『その依頼人』(07/09) ページ19
コンコン。
昼下がりノックの音でハッとした。
迎えいれる花子さんは所用で出かけている。
アポの連絡が入るはずの大野さんも会議に出ているし、ついでに言えば松本さんと二宮さんも捜査に出かけている。
霊に取り憑かれているとかいう人で、ほんとに取り憑かれてるならさっさと祓ってこようってことで、見える人と祓える人が行った形。
もしこれが事件性があったなら私と櫻井さんも呼ばれるし、生霊だったり自分から霊を呼び寄せるようなひとなら相葉さんの出番。
つまり、呼び出しが来るまで待機してるような状態だ。
私は大野さんの取り巻くオーラが、鬼神を祀ってる神社やお地蔵様と似てる、みたいなことを聞いてから一つ気になることがあって資料を漁っていた。
櫻井さんはアポなんてあったっけ？って顔でメールを確認してるし、相葉さんはちょうどコーヒーを淹れていたので私がドアを開ける。
「はい？」
「あの、零課はこちらですか？」
透き通った白い肌。
長い髪がサラリと風に靡く。
黒目がちのキレイな瞳と、白いワンピースを着た年齢不詳のその美女は入るなり周りを見渡した。
相葉さんはお客さんかな？って顔をして慌てて一つ多くコーヒーを淹れる様子。
櫻井さんは私の方を見て、相談？って心で聞いてきた。
「相談ですか？よかったら中に」
「あのすみません……ここに背があまり高くなくて……髪の毛がふわふわしていて……優しそうな……男性はいますか？」
誰のこと？大野さんか二宮さんよね。
「髪は黒いですか？」
「いえ、茶色っぽいかな」
「肌は白い？」
「肌は白くなかったと思います」
「彼がどうかしましたか？」
「あの、霊の、通り道のことで相談があるんですけど」
「え？」
「……ちょっと困っていて……」
「困るというのは……何か」
「どうしても霊が家にいると電気系統がおかしくなったり部屋の温度が下がったり、妙な音が鳴るしあと静電気もありますよね、だから早く成仏できないかなぁ、と」
ああ、本格的なやつだ。
「相談なら中にどうぞ」
櫻井さんがそう言った。
「コーヒー淹れるからソファに座って」
相葉さんもそう言って私も中に促す。
「中にどうぞ」
「失礼します」
「多分その男性はうちの係長のことを言ってると思うのですが、彼がどうかしましたか？」
彼女はふわりと微笑んだ。
「よかった、ここにいらっしゃるんですね、困ってるならその人を尋ねればいいよ、と知り合いに聞きまして」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年7月6日 1時
