〇≠無の証明[番外編] (ページ17)

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相葉さんと二宮さんが、報告書を書きに署に戻るついでに、彼女を家まで送って行った。

「一件落着かな」
松本さんかそう言った。

「誰もいないセットの裏側から視線を感じるという怪奇現象は生霊だってってこと？」
櫻井さんが松本さんに聞く。

「そうとしか思えないんだよなあ、それか飯山くんがストーカーみたいに新道さんを見てるかのどちらか」
「ありうる」

監督が、『だから！好きでたまらない男を奪われたんだぞ！もっと好きだ！って顔をしなさい』
とか新道さんに言ってる。
『朱莉が飯山くんを嫌いだからってそんなの言い訳にならない、それでも女優か』って怒られてるところを見て、笑いを押し殺すのが大変だ。

飯山くんの『朱莉ちゃんは俺のこと嫌いなのか』って落ち込んでるのも可笑しい。

『私ならもっとうまくやるのに』って思う戸田さんの嫉妬は、次の作品での自分の力に変えればいい、それくらい強気になれないなら女優はやめた方がいい。
いやがらせするなんて言語道断だ。
それでもし新道さんが降板しても、戸田さんの役は黒瀬ユイの妹役にはなれない、不幸そうに見えるくらいの圧倒的な美形というのは努力でどうにもならない。

しばらくして、休憩の時間になって、『よんだ？』って大野さんがやっと来た。

「あ、ごめん、もう役目終わった」
櫻井さんがそう言ったら、ええーって言いながら大野さんががっくりした。

「あ、でも待って」
「ん？」

松本さんがおかしそうに笑う。

「特に迷惑かけてるわけでもないけど、ここにたくさんいた浮遊霊、全部いなくなったよ」
「……」
「ほら、たまにホラー映画の撮影で、目立ちたがり屋の霊とかがこっそりフレームインしたりするじゃん」

松本さんが平然とそう言った。

「へ、へえ……」
知らなかった。そうだったのか。

「え？だからいつも撮影前にお祓いとかしてるでしょ」
「……」
松本さんがふふふ、って笑ってる。

「紫音くんはどこ」
大野さんが紫音くんを見た。そのあと黒瀬ユイを見る。

「……Aに似てる」
「……は？」

私より先に思いっきり大野さんに反論したのは櫻井さんでまたイラっと来た。

「あ、でも、Aの方が性格よさそう」
大野さんがそう言って、櫻井さんがまた『はあ？』って言ってる。

「え？似てない？」
「似てねーよ！どこが？こいつと？全く似てねえ」
櫻井さんが怒ってる。最悪だ。この人最悪。
松本さんと大野さんがぷぷぷ、と笑った。