〇≠無の証明[番外編] (ページ12)

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全員から話を聞いて、原因不明のトラブルが重なってるだけで特に霊障ではないんじゃ？と結論づけようとしたとき、おはようございます、という声がして何人か入ってきた。

「戸田舞夏さん入られまーす」
「おはようございまーす！宜しくお願いしまーす」
「飯山アキラさん入られました」
「おはようございます」

独特な雰囲気だな。
皆が挨拶しているのを横目で見て、紫音くんにあの子は？と聞く。

「新道さんの親友役と新道さんの恋人役です」
「へぇ」
「親友に彼氏を奪われるんです、姉は婚約者を奪われて、僕は担任の先生に片想いしているんだけど相手にされないという」
「……あらら、みんな上手く行かないのね」
「そうです、100人に愛されるかわりに一番大切な人に愛されない兄弟です」
「切ないわね」
「大切なたった一人に愛されたら、100人に嫌われてもいいのに」
「でもそれは100人に愛される人が言うから説得力のあるセリフよね、三人ともめちゃくちゃ美形だもの」
「僕、100人に愛されてませんけど、たった一人がいいです」
「紫音くんが大切な人に愛されますようにって祈っておくわね」
「意地悪だなぁAさん」

紫音くんが流し目みたいな感じで私を見た。
ゾクッとした。
17歳だけど、大人みたいな顔をする。
「お茶飲みますか？」
「いいよ、」
「いえ、持ってきます！」

そう言いながら紫音くんが走っていった。

背後からとん、と肩を叩かれる。

「現行犯逮捕」
「うるさ……あ、松本さん！櫻井さんかと思った」
「モテるねぇお姉さん」
「いやいやいや」
「ところで、読んで欲しい人がいるんだけど」
「……え？」
「あとから来た二人。新道さんに挨拶したけどよそよそしいから気になって」
「櫻井さんは？」
「新道さんと黒瀬さんにつきっきり」

む。
なんだろう、イラッとする。

「不思議な関係だよね、Aと翔さん」
「え？」
「心お互いに読めるっていいじゃん。俺も同じ目持ってる子居たら気になるかも」
「……」
「例えば彼女できたりしたら、この目のこと言わなきゃいけないでしょ？」
「そうですねぇ」
「俺は家の中を素通りする霊がいても、なんでわざわざ俺ん家の中通るんだよ！って突っ込む程度だけど怖がる子もいるよね」
「……うん」
「迂闊に人を好きになったり恋人作ったりできねー、うちの課の奴みんな思ってると思うよ、大野さん以外」
「……孤独だね」

そっか。
そうだよね。

松本さんが苦笑した。