〇≠無の証明[番外編] (ページ2)

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チーム零の日常『色魔』ページ2

「あの、……こちらに回されてきました……」

おどおどとした女性が一人、入ってきた。

……ここかな……どの人かな……

心の声が聞こえてきた。
40代なかば？申し訳ないけど二宮さんの倍くらいの体型だ。
べったりとした黒髪で、丸い鼻が印象的。
化粧っけのない顔で、ひらひらした服を着て、丸っこい指にダイヤかなにかの指輪。
スーパーブランドのバッグを手にして、もじもじしている。

「ご相談ですか？どうかしましたか？」

櫻井さんがソファを手で促した。

……!!!!

女性がのけぞった。
……か、か、かっこいい！聞いた通りだ！

心の声が聞こえて、椅子に座る。
聞いた通り？
櫻井さんが心で私に話しかけてきた。

……代わって。多分。例のパターン。
……了解。初めて対応する。
……うっそまじ？頼む、松本くん帰ってこないでねって連絡しとこ。

「あ、失礼、電話が。東城が代わります」
「こんにちは。東城と申します、お話お伺いします」
「私、田中といいます」

……ああ、この女じゃないんだけどな。

ものすごくハッキリ心の声が聞こえてきて、声に出したんではないの？って間違えて、思わずパソコンを見てる二宮さんを振り返った。

別にすました顔でパソコンを見てるから、声には出してないみたいだ。
櫻井さんを見たら、苦笑した。

「田中さん、ご相談は？」
「あの私……盗聴、というか……監視されてるみたいなんです……」
「盗聴、監視」
「はい……」
「それは、家で？」
「全部です、家も職場も。朝から晩まで監視されてます」
「それは誰に？心当たりはあるんですか？」
「彼氏にです」

……彼氏がいるって幻想に悩まされてる、と。メモメモ。

二宮さんの心の声に思わず吹き出しそうになった。
やめてよ！

睨んだけど知らん顔。ひどい。
「毎日私の行動を監視しています」
「……毎日……？」
「はい、今も多分……」
「今もですか？」
「はい」
「どうやって」
「私が寝ている間に、体にＧＰＳが仕込まれたようで」

……ああ、ちょっとこれ……病院おすすめしなきゃいけないやつだ……
憂鬱になりながら、話を聞く。

「彼は何のお仕事を？」
「芸能関係の社長です、この人です」

写真を見せられた。
櫻井さんもチラっと覗く。

「……あ！」
「わ！」

思わず声が出た。
二宮さんも覗いてきた。

「え、山本さん？」
「ご存知なんですか？」
「ええ……」

写真の男は。
紫音くんの事務所の社長さんだった。