さ ページ5
困った。
大変困った。
相葉くんの人懐っこさ想像以上。
これは仕事の頑張りと比例してるとはいえ、頑張りすぎ。
「行こ！Aちゃん！」
気を抜くと手をつながれそうになる。
「荷物持ってくれるの？」
「違うよ！手！」
「……」
「そんな嫌そうな顔しなくていーじゃんー！」
ぶー垂れるのも可愛いけど、ちょっと怖い。
「ね、笑って？」
「え！理由もなく笑えない！」
「可愛いのにー」
ああ、ダメだ。
鳥肌。
「Aちゃん、モテてたでしょ」
ホラ来た。
頭から冷水を浴びせられたように固まる。
「モテない！」
「絶対モテたと思うなあ、だってさ、すっごい動きとか上品だし、お嬢様っぽい」
「お嬢じゃないし、モテてない」
「姿勢いいよね」
「バレエやってたから」
「ほらお嬢じゃん」
うわーん。泣きたい。
大川どっかいけ。
違った、相葉くんだ。
夢の中でも、仕事をしていたら何故か大川がいて、A！とか制服姿で私を呼んで、仕事してるのに、中学の教室で横に木下もいて、近づいてくる。
足がもつれてニゲラレナイ、怖い。怖いよ！とか思って目が覚める。
汗びっしょり。
トラウマすぎる。
もしかして私は女性下着の売り場なんかで働くべきだったのではないか。
などと転職も考え出す始末。
営業もしんどいし。
はあ。
毎日が地獄だ。
周りの人にしてみたら、きっと天国。
Aちゃん冷たぁーい。ってほっぺ膨らませて口をとがらせる相葉くん。
これ食べて元気出して、って語尾にハートなんか付けちゃってシュークリームをくれる。
いい人だ。
これでイケメンじゃなかったら惚れそうだよ。
ふと相葉くんを見たら、唇と鼻の間にベールペンを挟んで、腕を組んで天井を見てる。
スーパー爽やか可愛いチーフ。
「あ！」
何か思いついたらしい。
でも、あ！と言ったせいでボールペンが落ちた。
慌てて拾って、机の下に潜り込んで、出てくるときに頭をぶつけそうになって避けた！
あっぶね！とか言って目をキラキラさせてる。
「きみちゃん今の見た？超ぎりぎりセーフ」
「見てない」
「見ててよー！風間は？」
「見てないよー残念」
「んもー」
は！目が合った。
「見てた？」
「見てない」
嘘。見てた。ぎりぎりだった。鼻の皮一枚の差だった。
「すごかったのに……」
がっかりしてる。可愛い。
可愛い、ってのは、アリかも。わんこみたい、って。
それなら平気かも。
よしよし。
頷いてる私を、相葉くんが不思議そうに見た。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
