月のない夜は君と[Ｎ] (ページ44)

今日:7 hit、昨日:52 hit、合計:2,541,789 hit

44 ページ44

「そりゃそうだよ……みんなそうなんじゃないの？」
「そうなのかな」
「うん、もっと二宮くんのこと知りたい」
「……」
「それが欠点でも、そこを含めて全部大好きって言いたいからもっと知りたい」
「……うん」
「不思議だよね、女の見る目が最悪でも、腹黒でも偏食でも変人でもね、ここが好きっていうたったひとつがあれば、全部好きになるんだよね」
「……ああ！俺の全部が好きって、お前俺の何知ってんだよって思ってたけどそういうこと？」

二宮くんがちょっとびっくりして言った。

「知らなかったの？」
「うん、俺の全部好きっていう奴に、俺の何を知ってんだよ、って思ってたけど」
「違うよ、例えば、二宮くんの目とか声とか策士なとことか、あとは、可愛いとことか」
「……いっぱい出てきた」
「まだまだあるけど、二宮くんの好きなとこね、一つとっても好きなところがあるとするじゃない？」
「うん」
「そしたらその持ち主である二宮くん本体を好きになるんだよ」
「うんうん」
「だからね、今後何が起こっても、何を見せられても、根底に大好きがあるから全部好きなんだ」
「……」
「嫌いなとこが見つかったとしても、やっぱりそこも含めて二宮くんだから、やっぱり好き。未知の部分もきっと愛せるから、全部好きって言うのよ」
「なるほど」

二宮くんが私の頭にミネラルウォーターのペットボトルをのせて、ほい、って言った。
ありがと、って受け取って、ぐびぐび飲んでる私をぼーっと眺めてる。
なんか恥ずかしい。

「それなら全部好きってのもアリかぁ」
「盲目だけどね」
「うん」
「だけど、あんまり盲目なのも怖いからね、ちゃんと冷静な目も持っておきたい」
「うん」
「例えば好きな人が道を誤ったとして、好きだからって一緒に謝った道を行くのは愛じゃないよね。間違ってるよ、こっちだよ、って言うのが愛情だと思う」
「何の話」
「けど、どうしても、どうしても、って言うなら、一緒に地獄に堕ちようね」
「どうした？なに？」

二宮くんが心配そうに私を見た。

「いや、こないだね、暗い夜は一緒に復讐しようって言ったの思い出して」
「……ああ！」
二宮くんがぶふ、っと吹き出した。

「今日は新月で月がないよ？」
「え？復讐に行っちゃう？」
「どうする？」
「……復讐なんてつまんないよね。もういいからこっちおいでよ」
「二宮くんならそういうと思ってた！」
「え？」

二宮くんが蕩ける笑顔で、私をふんわり抱き寄せた。