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……いま恋心と言った？
嘘だ。
思わず顔を見る。
「俺達が敗北感やら劣等感で押しつぶされて悩んだりくだ巻いてる間に、Aは颯爽とスキルアップしていって」
「……」
「気づいたら涼ちゃんにAを掻っ攫われた、瞬く間に仕事も友情も仄かな恋心もお金も何もかも無くなった」
「お金は関係ないよね」
「懐も心も寂しくなった」
「飲み代ってことかな？それで？」
「まあ、俺も頑張ってすぐAに追いついたけど追い抜けないまま、今に至る」
「……次抜かされそうよね？」
「無理だよ」
二宮くんが、がっくり項垂れてる。
「そんな時にね、Aのせいですべてのやる気がなくなったとか愚痴ってるのを優奈が聞いて、優奈も失恋したとかで何人かで飲みに行ったんだけど」
「……」
「それこそ、傷の舐め合い的なね……俺、昨日Aに電車で寂しいもの同士傷の舐め合いしちゃう？って言ったの覚えてる？」
「うん。この話やめよって言ってたね」
「あの時までずっと忘れてたんだけど、俺、優奈のことAって呼ぼうとした前科がある」
「……」
「他の女といながら、Aのこと思い出したり、やけくそになったりした」
二宮くんが、両手で顔を洗うみたいにゴシゴシした。
「でも、優奈のちょっとピントのズレた明るいとことかにだんだん情も湧いてきてね、仲良く付き合ってたんだよ、可愛いし」
「……」
「お互い二番目だったんだもんね、そりゃ気も合ったし……ただ、根底には涼ちゃんに対する妬みとかは消えないまま」
「うん」
「優奈も多分、Aに対する妬みとか、そういう気持ちあったんだろうな……ちょっとした愚痴とか聞いたな」
「……たとえば？」
「Aに嫌味言われたよー、うわーん、的な……」
「……」
「のろけたいのはわかるけど二宮くんが馬鹿に見えるからうちの上司の前でのろけるのだけはやめてくれない？とかね」
「……あ！うちの課長の前で、二宮くんデート中もお仕事頑張ってましたー！忙しいんですね企画部、とか言ってた！」
「げ」
「家に仕事持ち帰る無能って思われるよね」
「……」
「あとデートだからすみません、って先輩の誘い断ってる優奈ちゃんに、嘘でも体調優れなくて明日に障るからって言いなさいとか言った」
「……」
「Aちゃん怖いーって言われた。デートなんて！結婚したら一生の付き合いだよ？嫌でも顔見なきゃいけない日が来るんだよ？何言ってんだ！」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
