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主任になって、しばらくして涼ちゃんと付き合いだして。
先輩や上司から可愛がられて、後輩から慕われて、私の人生順風満帆だった。
取引先や仕事にも恵まれた。
けど、唯一の同期で同僚の二宮くんはもしかしたら私を鬱陶しく思ったりしてたのかな。
嫌われてたなんて全然知らなかった。
……知らなかった。
「A？」
「……涼ちゃんって、私と同じタイミングで主任になったよね？」
「うん、入社して一年半後？だっけ？」
「社員級、3つくらい飛ばしたよね私達」
「うん、俺多分次課長になると思う、部長定年だし、ところてん方式で」
「そうなんだ、おめでとう」
「だから、そろそろ結婚しようか」
「嫌です」
「Aも仕事続ければいいじゃん、家事も育児も一緒に頑張ろう、お前の生きたいように生きればいいよ、だから」
どうしてこのセリフ、浮気する前に言わなかったのかなぁ？
人生ってほんとタイミングだね。
「優奈ちゃんに結婚してもらいなよ……きっとかわいい奥さんになるよ」
「……俺が好きなのはお前なのに？」
「ほんとに好きなら浮気なんかしない」
「いや、するだろ、男はみんなするだろ、しない奴はチャンスがないだけだって」
「どっちにしても女にバレるような浮気をする男とは結婚したくないわね、やるならうまくやりなさいよ、ゲス野郎」
「口悪うう」
「下半身だらしない男に言われたくない」
「……」
「ほんと大好きだったんだよ、大好きだった。幸せだったなぁ、楽しかった。ありがとう」
「それなら」
涼ちゃんが私の肩を掴んだ。
「ねぇ？大好きなまま別れさせてよ、私を後悔させて。なんであんないい男ふったんだって、死ぬほど後悔させて欲しい」
「……」
「かっこ良くて賢くて誰よりも強くて、でも可愛くて明るくて、そんな私の涼ちゃん。自慢の元カレなんだ！って言わせてほしい」
「……A」
「浮気くらい許せよ、英雄色を好むって言うだろ、お前ほんと馬鹿だったよな！って、20年後とかに私にギャフンと言わせて」
「……」
「そういう終わり方をしたい。いつか別れるなら今がいい。浮気を許さなかった器の小さい潔癖症の女ってバカにされる日が来ますように」
涼ちゃんの手がスルリと落ちる。
「お前の、こうと決めたらそれを貫く潔いところとか、知的で強くて、可愛いとこもあって、いつも綺麗で明るい、Aが好きだった」
涼ちゃんが呟いた。
「……その言葉一生大切にして生きていくわ」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
