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企画部に戻ったら、二宮くんはまだ帰ってきてなかった。喫煙所かな。
ひとつため息を吐いてから、カタカタパソコンを叩き出す。
ラインが届いたのを見て確認する。
『来てくれるまで待ってるから
返事は不要です』
ああ、既読スルー状態に耐えられないんだな涼ちゃん。
そういうとこにもまたため息が出た。
暫くしたら二宮くんが戻ってきて、ちょっと目が合ってドキッとした自分に舌打ちしたい。
完全参ってるじゃない！
午後からの仕事は、捗らない。
ノロノロ。
私と二宮くんの様子を見て、加藤くんと増田くんが首を傾げてる。
手懐け失敗かな？とか聞こえてきた。
手負いの熊だからね。とかまで。
仕事はやっぱり定時までには終わらなくて、二宮くんが7時半頃帰っていくのに気付いたけど、なんにも言えないまま。
涼ちゃん待ってるかな。
でもそんなこと知らないもん。
私の都合とか聞かずに勝手に約束したのは涼ちゃんなんだから、知らない。
それでも、8時半を過ぎた頃、どうしても気になって立ち上がる。
「お先失礼します」
「お疲れ様でーす」
残っていた加藤くんが答える。
いつもの場所。
とりあえず、いつも待ち合わせに使ってた本屋に足を向けた。
コーヒーやさんもついていて、勉強してる学生や仕事してる営業っぽい人や、高校生のカップルなんかがたくさんいる。
涼ちゃんいるかな。
……いた。
柔らかなブラウンの髪。ふんわり目元にかかる長さの前髪。細身の黒いスーツを着こなして、洋書を読んでる綺麗な横顔。
横にいる女子大生みたいな子がチラチラ涼ちゃんを見てる。
どうみたってイケメン。嫌になってくるくらいのイケメン。
このまま帰ってやろうかしら。
ひとつため息を吐いて、背を向けようとしたら涼ちゃんがこっちを見た。
「あ……A！」
私を見てそんな嬉しそうな顔なんて何年ぶりに見たかしら。
「飯行く？」
立ち上がってこっちに向かってきて、横にいた女子大生たちが私を見た。
ひそひそ。
こういうのは、慣れっこ。
どうせ、彼女は普通だね、とか言ってるんでしょう。
「勘違いしないで」
「え……？」
「私は涼ちゃんに、Aにすっぽかされた、って言われるのが嫌だから来ただけ」
「……」
「涼ちゃん気づかなかったと思うけど、昨日優奈ちゃんお持ち帰りしたとこみたんだけど？」
「出ようか」
涼ちゃんが慌てて店を出ようとした。
「浮気？」
女子大生がコソコソ話してる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年3月31日 8時
